レシピエントの社会参加の現状も踏まえた移植後成績~福岡大学の実情

1997年に始まった本邦の肺移植は5年生存率73%、10年生存率60%と良好な成績を残しているが、拒絶や感染による度重なる入院により社会復帰が困難な症例は少なくなく、免疫抑制剤を含む薬剤の副作用によるQOLの著しい低下がみられる症例など、あまり大きく取り上げられる機会の少ない、多くの問題が存在する。福岡大学では2006年10月から2024年3月までに79例の肺移植(脳死両肺28例、脳死片肺45例、生体6例)を実施してきたが、感染や拒絶、悪性腫瘍により28名を失った。パートタイムを含む仕事と家事を含む社会復帰率は41.7%であり、体調不良により社会復帰ができない症例が21.5%存在した。これらの...

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Published in移植 Vol. 59; no. Supplement; p. s173_1
Main Authors 平田, 朋久, 佐藤, 寿彦, 増田, 佳子, 中島, 裕康, 白石, 武史, 宮原, 聡, 若原, 純一, 上田, 雄一郎, 三股, 頌平, 早稲田, 龍一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2024
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.59.Supplement_s173_1

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Summary:1997年に始まった本邦の肺移植は5年生存率73%、10年生存率60%と良好な成績を残しているが、拒絶や感染による度重なる入院により社会復帰が困難な症例は少なくなく、免疫抑制剤を含む薬剤の副作用によるQOLの著しい低下がみられる症例など、あまり大きく取り上げられる機会の少ない、多くの問題が存在する。福岡大学では2006年10月から2024年3月までに79例の肺移植(脳死両肺28例、脳死片肺45例、生体6例)を実施してきたが、感染や拒絶、悪性腫瘍により28名を失った。パートタイムを含む仕事と家事を含む社会復帰率は41.7%であり、体調不良により社会復帰ができない症例が21.5%存在した。これらの多くは移植手術の後遺症や感染・拒絶によるものが最も多いが、移植後の薬剤による副作用が原因と考えられる症例も少なからず存在する。我々の施設では味覚障害を訴える症例が11例(13.9%)と多く、脱毛や圧迫骨折、食思不振などのQOLの著しい低下を23例(29.1%)に認めた。また移植後の生活習慣病として糖尿病25例(31.6%)、高血圧15例(18.9%)であった他、24例(30.3%)に腎機能障害を認め、うち3例は人工透析を導入した。悪性腫瘍は7例(8.8%)に認め、慢性拒絶は11例 (13.9%)に認めた。肺移植はその倫理的背景から生存率はもちろんのこと、社会復帰を果たすことが強く求められる。生活習慣病を含め、薬剤の副作用による身体障害の軽減に主眼を置いた移植後管理も重要である。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.59.Supplement_s173_1