家族性肺線維症に対して脳死両肺移植術を行った症例

【背景】家族性肺線維症(FPF: familial pulmonary fibrosis)は若年発症するまれな間質性肺疾患で,肺移植の報告例も少なく,予後不良な疾患である.今回我々は,FPFに対する肺移植を経験したため報告する.【症例】症例は29歳女性.家族歴として7名の間質性肺炎歴あり.14歳時に姉の間質性肺炎発症を契機として外科的肺生検を施行,FPFの診断が得られた.25歳時に姉の逝去を契機に脳死肺移植登録.登録時は比較的呼吸状態が保たれていたものの,病勢の経時的な増悪を認め,肺高血圧(平均肺動脈圧50mmHg)も生じ,酸素必要量が増加して就労も不可能な状態となった.登録から4年後の29歳...

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Published in移植 Vol. 59; no. Supplement; p. s298_1
Main Authors 小畑, 智裕, 赤尾, 恵子, 木谷, 聡一郎, 竹井, 大貴, 土肥, 良一郎, 佐々木, 俊輔, 松本, 桂太郎, 谷口, 大輔, 宮崎, 拓郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2024
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.59.Supplement_s298_1

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Summary:【背景】家族性肺線維症(FPF: familial pulmonary fibrosis)は若年発症するまれな間質性肺疾患で,肺移植の報告例も少なく,予後不良な疾患である.今回我々は,FPFに対する肺移植を経験したため報告する.【症例】症例は29歳女性.家族歴として7名の間質性肺炎歴あり.14歳時に姉の間質性肺炎発症を契機として外科的肺生検を施行,FPFの診断が得られた.25歳時に姉の逝去を契機に脳死肺移植登録.登録時は比較的呼吸状態が保たれていたものの,病勢の経時的な増悪を認め,肺高血圧(平均肺動脈圧50mmHg)も生じ,酸素必要量が増加して就労も不可能な状態となった.登録から4年後の29歳時に脳死肺移植の斡旋に至り,脳死両肺移植を行った.術後経過は良好で,術後11日目にICU退室,38日目に酸素フリーで自宅退院となった.現在,大きな問題なく外来経過観察中である.【考察】FPFはサーファクタントタンパク質・ムチン5Bなどの遺伝子変異に加え,テロメア関連遺伝子変異やテロメア短縮を特徴とすることが報告されている.FPFについては,本症例のように近親者の喪失体験などもあり,全人的なケアが必要である.また,若年発症で一般に進行も早いため,早期発見して肺移植に至ったとしても,長期にわたる術後管理が必要となる. 【結語】FPFに対する脳死肺移植は有効な手段であるが,今後症例の蓄積が待たれる.
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.59.Supplement_s298_1