腹部大動脈瘤・人工血管置換術後の生体腎ドナーに対する腹腔鏡下腎採取術

【諸言】臓器移植において、ドナー不足は喫緊の課題であり、生体腎移植においてもドナー基準の拡大が進められている。今回我々は、腹部大動脈瘤に対して人工血管置換後であったが、ドナーとして適格であると判断し、安全に腹腔鏡下腎採取術を施行した症例を経験したで報告する。【症例】70代、男性。30代の息子への腎提供を希望され当科を受診した。既往歴に高血圧と左膿胸、腹部大動脈瘤があり、1年前に人工血管置換術が施行されていた。降圧剤1剤で血圧は良好に管理されており、イヌリンクリアランスは78.4 ml/min/1.73m2で、悪性腫瘍および感染症スクリーニングで問題を認めなかった。腹部大動脈は腎動脈分岐部の約3...

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Published in移植 Vol. 59; no. Supplement; p. s282_2
Main Authors 橋本, 浩平, 舛森, 直哉, 小林, 皇, 太刀川, 公人, 田中, 俊明, 前鼻, 健志
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2024
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.59.Supplement_s282_2

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Summary:【諸言】臓器移植において、ドナー不足は喫緊の課題であり、生体腎移植においてもドナー基準の拡大が進められている。今回我々は、腹部大動脈瘤に対して人工血管置換後であったが、ドナーとして適格であると判断し、安全に腹腔鏡下腎採取術を施行した症例を経験したで報告する。【症例】70代、男性。30代の息子への腎提供を希望され当科を受診した。既往歴に高血圧と左膿胸、腹部大動脈瘤があり、1年前に人工血管置換術が施行されていた。降圧剤1剤で血圧は良好に管理されており、イヌリンクリアランスは78.4 ml/min/1.73m2で、悪性腫瘍および感染症スクリーニングで問題を認めなかった。腹部大動脈は腎動脈分岐部の約3cm尾側から両側総腸骨動脈までYグラフトで置換されていたが、腎動脈も含め高度な動脈壁の石灰化は認めなかった。ドナーとして適格と判断し、後腹膜アプローチによる腹腔鏡下左腎採取術を施行した。手術時間は5時間35分で出血量は25ml、腎血管および尿管周囲の癒着はなく、安全に手術を施行し得た。レシピエント手術でも技術的な問題は生じなかった。周術期の合併症を認めず、術後1ヶ月の血清クレアチニン1.60 mg/dl、eGFR 33.7ml/min/1.73m2であった。【結語】本症例では腹部大動脈瘤に対する人工血管置換後ではあったが、通常通りの手術手技で安全に施行できた。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.59.Supplement_s282_2