右内腸骨静脈間置グラフトを用いて門脈再建を行なった生体肝移植の一例

【はじめに】門脈狭窄を伴う症例に対する肝移植では,血管グラフトを用いた門脈再建を要する.今回,当科で経験した症例における門脈再建の工夫を報告する.【症例】22歳女性.新生児期に胆道閉鎖症と診断され葛西手術を施行された.術後19年目から腹水,脾腫が生じ非代償性肝硬変と診断され,術後22年目に実兄ドナーとした生体肝移植術を施行した(直前MELDスコア:16点). ABO型不適合移植(ドナー:A型,レシピエント:O型)に対し,術前血漿交換とリツキシマブを用いた脱感作療法を実施した.門脈狭窄による巨大な脾腎シャントを認めたため,脾腎シャントを閉じた上で右外腸骨静脈を用いた門脈再建を行った.【再建手技の...

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Published in移植 Vol. 59; no. Supplement; p. s384_1
Main Authors 小船戸, 康英, 丸橋, 繁, 木村, 隆, 千葉, 裕仁, 武藤, 亮, 石亀, 輝英, 佐藤, 直哉, 芳賀, 淳一郎, 東, 孝泰, 月田, 茂之, 見城, 明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2024
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.59.Supplement_s384_1

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Summary:【はじめに】門脈狭窄を伴う症例に対する肝移植では,血管グラフトを用いた門脈再建を要する.今回,当科で経験した症例における門脈再建の工夫を報告する.【症例】22歳女性.新生児期に胆道閉鎖症と診断され葛西手術を施行された.術後19年目から腹水,脾腫が生じ非代償性肝硬変と診断され,術後22年目に実兄ドナーとした生体肝移植術を施行した(直前MELDスコア:16点). ABO型不適合移植(ドナー:A型,レシピエント:O型)に対し,術前血漿交換とリツキシマブを用いた脱感作療法を実施した.門脈狭窄による巨大な脾腎シャントを認めたため,脾腎シャントを閉じた上で右外腸骨静脈を用いた門脈再建を行った.【再建手技の工夫】肝臓摘出後,離断した門脈は膵背側を通して膵下縁に引き抜き,外腸骨静脈グラフトと吻合した(門脈延長).吻合した外腸骨静脈は再び膵背側を通して膵上縁へ誘導しグラフト門脈と吻合した.門脈再建に先立ち,脾腎シャント閉塞で門脈圧が上昇する事を確認した(17→35cm/H2O).【術後経過】CTで再建門脈に狭窄/閉塞はなく,良好な血流を確認した.急性拒絶反応なくグラフト機能良好であり,術後47日目に軽快退院した.【考察】 巨大脾腎シャントを有する場合,術中門脈圧測定を行い十分な門脈血流を確保することが重要である.また,本症例では自家血管グラフトを膵背側に通し直線化したことで,生理的な門脈血流が保たれ,術後良好なグラフト血流維持に寄与したと考察された.
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.59.Supplement_s384_1