タンパク質フォールディングの物理化学 ファネルとフォールディング経路
1. はじめに タンパク質フォールディングの研究は近年, 大きな盛り上がりを見せている1). 理由の1つは, ゲノムプロジェクトにより, 遺伝情報の獲得スピードが急加速したことである. アミノ酸配列既知のタンパク質数に対する立体構造既知のタンパク質数の比率は年々減少し, 実用的見地から, 立体構造予測に対する期待は膨らんでいる. 実際問題としても立体構造予測問題に手がかりが見つかり, 従来のあきらめムードが楽観ムードに変わってきた2),3). 他の要因としては, 周辺分野への広がりがあげられる. 狂牛病やアルツハイマー病などのいわゆるコンフォーメーション疾患は, 間違ったフォールディングが引き...
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Published in | 生物物理 Vol. 40; no. 1; pp. 20 - 24 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本生物物理学会
2000
日本生物物理学会 |
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ISSN | 0582-4052 1347-4219 |
DOI | 10.2142/biophys.40.20 |
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Summary: | 1. はじめに タンパク質フォールディングの研究は近年, 大きな盛り上がりを見せている1). 理由の1つは, ゲノムプロジェクトにより, 遺伝情報の獲得スピードが急加速したことである. アミノ酸配列既知のタンパク質数に対する立体構造既知のタンパク質数の比率は年々減少し, 実用的見地から, 立体構造予測に対する期待は膨らんでいる. 実際問題としても立体構造予測問題に手がかりが見つかり, 従来のあきらめムードが楽観ムードに変わってきた2),3). 他の要因としては, 周辺分野への広がりがあげられる. 狂牛病やアルツハイマー病などのいわゆるコンフォーメーション疾患は, 間違ったフォールディングが引き金になることが指摘されている. また, 塩基配列識別などのタンパク質の高次機能は, 鍵と鍵穴のような硬い結合ではなく, 部分的なフォールディングによって実現されていることが明らかになってきた1). |
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ISSN: | 0582-4052 1347-4219 |
DOI: | 10.2142/biophys.40.20 |