生活保護の対象を選別する安否判定のしくみ : 雑誌『生活と福祉』による検討

生活保護制度は,「生活困窮者」救済を実現する施策のひとつである.ただし制度の実質的な対象と方法は,行政運営によって決められる.たとえば実際の対象は,ある範囲の保護基準から算出した最低生活費と収入認定額の差から判断されることになっている.本稿は,この安否判定の方法がつくられる経過をたどり,「生活困窮者」選別のしくみを検討するものである.分析では,厚生省が実務担当者に与える「指針」に焦点があてられ,その「指針」をたどる主な資料として雑誌『生活と福祉』が用いられる.結果として,「生活困窮者」を選別するしくみが徐々につくられ,修正が施されつつ維持されてきたようすが実証的に明らかにされた.さらに制度運用...

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Published in社会福祉学 Vol. 46; no. 1; pp. 29 - 39
Main Author 岩永, 理恵
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本社会福祉学会 31.07.2005
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ISSN0911-0232
2424-2608
DOI10.24469/jssw.46.1_29

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Summary:生活保護制度は,「生活困窮者」救済を実現する施策のひとつである.ただし制度の実質的な対象と方法は,行政運営によって決められる.たとえば実際の対象は,ある範囲の保護基準から算出した最低生活費と収入認定額の差から判断されることになっている.本稿は,この安否判定の方法がつくられる経過をたどり,「生活困窮者」選別のしくみを検討するものである.分析では,厚生省が実務担当者に与える「指針」に焦点があてられ,その「指針」をたどる主な資料として雑誌『生活と福祉』が用いられる.結果として,「生活困窮者」を選別するしくみが徐々につくられ,修正が施されつつ維持されてきたようすが実証的に明らかにされた.さらに制度運用上の矛盾を踏まえると,今後,法の運用方法の決定のみでなく,その立案,形成,実施の各場面を含む政策過程を分析する必要が考えられた.
ISSN:0911-0232
2424-2608
DOI:10.24469/jssw.46.1_29