炎症

炎症は, 疼痛, 熱感, 発赤, 腫脹の四大徴候によって特徴づけられる. 少なくとも古典的にはそのように定義づけられていた. 炎症の場を組織学的にみると, 充血, 血管透過性の亢進, ならびに細胞浸潤が主な病像であるといえよう. ところで, 炎症をもたらす原因にはいろいろなものが考えられる. 物理的, 化学的な刺激, 細菌, ウイルス感染, 代謝異常, アレルギー反応などである. 特にアレルギー反応には, 一型, 二型, 三型, 四型の四つのタイプが指摘されているが, いずれのタイプも炎症をもたらすと考えてよい. では, 炎症反応は有害な反応なのであろうか. 一般的には, 炎症は生体にとって有...

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Published in炎症 Vol. 9; no. 5; p. 357
Main Author 宮本, 昭正
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本炎症・再生医学会 1989
日本炎症学会
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ISSN0389-4290
1884-4006
DOI10.2492/jsir1981.9.357

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Summary:炎症は, 疼痛, 熱感, 発赤, 腫脹の四大徴候によって特徴づけられる. 少なくとも古典的にはそのように定義づけられていた. 炎症の場を組織学的にみると, 充血, 血管透過性の亢進, ならびに細胞浸潤が主な病像であるといえよう. ところで, 炎症をもたらす原因にはいろいろなものが考えられる. 物理的, 化学的な刺激, 細菌, ウイルス感染, 代謝異常, アレルギー反応などである. 特にアレルギー反応には, 一型, 二型, 三型, 四型の四つのタイプが指摘されているが, いずれのタイプも炎症をもたらすと考えてよい. では, 炎症反応は有害な反応なのであろうか. 一般的には, 炎症は生体にとって有害な刺激に対する組織の防御反応であり, 炎症反応たしには生体に有害な刺激や侵襲に対して十分な抵抗を示すことができないと考えられる. たとえば, 細菌の侵入に対抗して毛細血管の透過性が高まり, 局所に免疫グロブリンを集め, さらに好中球を含めて種々の細胞が動員されることにより細菌の繁殖を抑え, さらに, 殺菌へとつながり, 生体を防御するわけである. その組織障害, 反応, 修復の過程でさまざまな病像が臨床的にも組織学的にもみられる. しかし, 外的な侵襲があまりにも強く, それに対する生体防御機能が十分に作動しえないと, 重大な障害をもたらし, 死につながりうる. また, 侵襲に対する生体の反応が強すぎても, 生体にいろいろな障害をもたらしうる. さて, 炎症を抑え, 機能の回復を図る手段として抗炎症剤が用いられている. 現在, わが国では抗生物質であるが, 世界的には抗炎症剤のほうが, その市販額において, 他のいかなる種類の薬剤と比較しても, もっとも大である. ことほど左様に炎症は重要である. そして, 疾病の背景には必ず大なり小なり炎症反応を伴っているといっても過言でない. また, 炎症にはいろいろな化学伝達物質の関与があることも解明されている. インターロイキン, イソターフェロン, tumor necrotizing factor(TNF), 血小板活性化因子(PAF), ヒスタミン, プロスタグラソジン, ロィコトリエン, スロンボキサン, 好中球遊走化因子(NCF), 好酸球遊走化因子(ECF), 遊走阻止因子等々が指摘されている. これらのあるものは, アレルギー反応の重要な化学伝達物質として注目されている. すなわち, 炎症反応やアレルギー反応, さらには免疫反応は, それぞれ深い係わりを持っているわけであり, 炎症を語るためにはこれらいずれをも無視できないと考えられる. 最近, いわゆる抗アレルギー剤と称される化学伝達物質の遊離抑制剤, 拮抗剤, ないしは産生代謝の阻害剤が, つぎからつぎへと開発されてきた. これらの抗アレルギー剤は, ちょっと視点を変えれば広義の抗炎症剤とも称しうるものではなかろうかと考えられる. 炎症にも多くの分野のものとの係わりがあるわけで, それらのいずれを無視しても, 炎症を語ることはできない. それとともに抗炎症剤も広い視野に立脚して考えるべき段階にきているのではなかろうか.
ISSN:0389-4290
1884-4006
DOI:10.2492/jsir1981.9.357