非都市部の子どもの進路選択に関する一考察: 地域の制約と資源に着目して

本稿は,地方県の非都市部の若者を対象に,進路選択時の経験や意識を分析することで,地域的条件が子どもの進路選択にどのように関わるのか明らかにすることを目的とする。本稿から得られた知見は以下の通りである。 第一に,非都市部の子どもは,進路選択時に地域的条件が不利に働くことで選択肢が狭まると認識していた。中学校段階では,時間的・経済的制約を受けている場合や,中学校まで小規模校に通っていた子どもにとって高校から人数規模の大きい都市部の学校に通うには不安がある場合が確認できた。 高校段階では,高等教育機関の中でも特に短大・専門学校に関する情報にアクセスする機会,地元外を含めた多様な職種を知る機会,個々の...

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Published in現代社会学研究 Vol. 38; pp. 19 - 37
Main Author 山田, 愛子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 北海道社会学会 2025
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ISSN0915-1214
2186-6163
DOI10.7129/hokkaidoshakai.38.19

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Summary:本稿は,地方県の非都市部の若者を対象に,進路選択時の経験や意識を分析することで,地域的条件が子どもの進路選択にどのように関わるのか明らかにすることを目的とする。本稿から得られた知見は以下の通りである。 第一に,非都市部の子どもは,進路選択時に地域的条件が不利に働くことで選択肢が狭まると認識していた。中学校段階では,時間的・経済的制約を受けている場合や,中学校まで小規模校に通っていた子どもにとって高校から人数規模の大きい都市部の学校に通うには不安がある場合が確認できた。 高校段階では,高等教育機関の中でも特に短大・専門学校に関する情報にアクセスする機会,地元外を含めた多様な職種を知る機会,個々の学力レベルに合った指導を受ける機会が限られていると認識されていた。 第二に,非都市部の子どもが地域の資源を自身の進路実現のために有効に活用しようと試みる姿が明らかになった。中学校段階では,地元の高校に対し,内容が分かっていて安心感があるという場合や,大学進学や地元就職に向けた充実したサポートを受けることができると見込んでいる場合がみられた。 高校段階においても,少人数制や若手教員の多さなど地元の高校の特徴が有利に働き,希望進路を実現するための資源として若者側に認識されていた。 以上を踏まえると,当事者の進路選択時の経験に着目することは,地域間格差の問題について理解を深めるために重要だと示唆できる。
ISSN:0915-1214
2186-6163
DOI:10.7129/hokkaidoshakai.38.19