脊髄電気刺激(SCS)と電気生理診断が有用であった高齢者の腰椎すべりを伴う腰部脊柱管狭窄症の2例

高齢者脊椎疾患の治療法の選択では侵襲的手術を躊躇し難渋する.診断では画像所見で無症候性の脊髄圧迫や馬尾圧迫の問題が生じ客観的に評価可能な電気生理検査が有用である.今回,高齢者腰椎疾患2例に低侵襲的な脊髄電気刺激(SCS)を施行し,脊髄機能評価として中枢運動伝導時間(CMCT),馬尾伝導時間(CECT)等の電気生理検査を行ったので,SCS治療と電気生理診断の有用性について報告する.(症例1)68歳女性.2020年8月両下肢痛,間欠跛行,左長母趾伸筋(EHL)低下が見られた.MRI所見で第4腰椎変性すべり,L3/4脱出ヘルニアと腰部脊柱管狭窄を認め馬尾型脊柱管狭窄症が疑われた.CMCTは両側遷延し...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 58; no. 4; pp. 617 - 623
Main Author 鷲見, 信清
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 25.10.2021
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.58.617

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Summary:高齢者脊椎疾患の治療法の選択では侵襲的手術を躊躇し難渋する.診断では画像所見で無症候性の脊髄圧迫や馬尾圧迫の問題が生じ客観的に評価可能な電気生理検査が有用である.今回,高齢者腰椎疾患2例に低侵襲的な脊髄電気刺激(SCS)を施行し,脊髄機能評価として中枢運動伝導時間(CMCT),馬尾伝導時間(CECT)等の電気生理検査を行ったので,SCS治療と電気生理診断の有用性について報告する.(症例1)68歳女性.2020年8月両下肢痛,間欠跛行,左長母趾伸筋(EHL)低下が見られた.MRI所見で第4腰椎変性すべり,L3/4脱出ヘルニアと腰部脊柱管狭窄を認め馬尾型脊柱管狭窄症が疑われた.CMCTは両側遷延して皮質脊髄路障害が疑われ,CECTは左が有意に遷延し馬尾障害が疑われた.鎮痛剤と物理療法で症状改善なく低侵襲手術を希望され同年9月SCSを施行した.術後2週で左EHL筋力回復を認め,術後10週でCMCTとCECTの左側改善傾向が見られ術後4カ月より鎮痛薬は不要となった.(症例2)79歳女性,第4腰椎変性すべり手術後症候群,骨粗鬆症,腓骨神経麻痺.2011年後方除圧術,2014年L4-5固定術を受けている.2020年2月初診時所見で腰痛,両下肢痛,T字杖間欠跛行,両下肢筋力低下が見られ,MRI所見で腰部脊柱管狭窄を認めた.CMCTは両側遷延し皮質脊髄路障害と両腓骨神経障害が疑われ,同年12月にSCSを施行した.術後2カ月で両下肢筋力の回復とCMCTの改善傾向が見られ,腓骨神経伝導速度の回復が認められた.2症例とも皮質脊髄路障害や馬尾障害が疑われ,病巣部の神経根や硬膜管の器質的圧迫を除圧することなく,SCS治療で症状の回復とCMCT,CECTの改善傾向が認められた.高齢者の脊椎疾患では低侵襲的SCS治療は有用であり脊髄機能評価が可能な電気生理診断は有益と思われる.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.58.617