腸間膜リンパ腫と筋萎縮性側索硬化症(ALS)を併発し,ALS発症早期に敗血症を合併した1例
我々は腸間膜リンパ腫に筋萎縮性側索硬化症(ALS)を併発し,ALS発症から9カ月後に敗血症にて死亡した症例の経緯を通所リハビリテーションに従事する理学療法士の立場から報告する.症例は69歳,女性.X年9月に腸間膜リンパ腫を発症,X年11月に足趾の脱力を自覚する.上位・下位運動ニューロン障害と電気生理学検査にて脊髄3領域に脱神経所見が示されたため,X+1年3月にAwaji基準でdefinite ALSと診断される.X+1年4月より通所リハビリテーション(通所リハ)を利用して在宅療養を継続していた.通所リハ利用当初は著明な球麻痺症状は認められなかったが,徒手筋力テストで下肢が0~1,上肢は3~4で...
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 58; no. 3; pp. 476 - 481 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
25.07.2021
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Subjects | |
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ISSN | 0300-9173 |
DOI | 10.3143/geriatrics.58.476 |
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Summary: | 我々は腸間膜リンパ腫に筋萎縮性側索硬化症(ALS)を併発し,ALS発症から9カ月後に敗血症にて死亡した症例の経緯を通所リハビリテーションに従事する理学療法士の立場から報告する.症例は69歳,女性.X年9月に腸間膜リンパ腫を発症,X年11月に足趾の脱力を自覚する.上位・下位運動ニューロン障害と電気生理学検査にて脊髄3領域に脱神経所見が示されたため,X+1年3月にAwaji基準でdefinite ALSと診断される.X+1年4月より通所リハビリテーション(通所リハ)を利用して在宅療養を継続していた.通所リハ利用当初は著明な球麻痺症状は認められなかったが,徒手筋力テストで下肢が0~1,上肢は3~4であり,筋力低下と筋萎縮を認めた.そして,通所リハ利用中において,上肢の神経症状の増悪と球麻痺,呼吸筋麻痺が出現,ALS Functional Rating Scale-Revised(ALSFRS-R)は低下傾向を示した.X+1年7月に腸間膜リンパ腫の増大に起因する尿管閉塞から水腎症を発症,尿路感染症と敗血症のため入院となる.Ceftriaxoneの投与により一時は解熱したが,入院から3日後に全身性炎症反応症候群により死亡した.ALSの発症から死亡までの全経過は平均で40.6±33.1カ月と報告されている.ALSの進行は個人差が大きいが,急速な病状の悪化に悪性腫瘍との関連も否定できないと考える.また,運動ニューロン疾患と悪性腫瘍を併発した症例は神経症状の悪化や合併症による重篤によるリスクが高い可能性があった.本症例は複数の生命予後に関与する疾患を有していたが,医療従事者間での情報交換が十分でなかった可能性がある.予後不良かつ複雑な病態管理が必要な高齢者の在宅支援において,通所リハでは症例の病態に応じたリハビリテーション会議の実施が重要である.また,各疾患の主治医との双方向の情報共有が可能となるような施設間連携の構築が求められる. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.58.476 |