「カセットJUNE」が構築した聴取経験とそれをめぐる聴き手との交渉に関する一考察

本稿は1980年代の「第二次アニメブーム」、「第二次声優ブーム」、そして「やおいブーム」が合流した地点で生まれた「カセットJUNE」に着目する。アニメで蓄積された声と声優に対する熱狂を引き継ぎながら、女性向け文化の領域で新たな聴取経験を築いたコンテンツである「カセットJUNE」の最初の二作であるカセット「鼓ヶ淵」とカセット「間の楔」、およびこの二作に寄せられた当時の聴き手のコメントを対象として、それらがいかなる聴取経験を提供し、そして聴き手といかにやり取りしたかについて分析を行う。成人男性の声を直接聴き手の耳元で響かせた「カセットJUNE」は、従来の少年愛マンガや小説とは異なるような、身体全体...

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Published inアニメーション研究 Vol. 23; no. 2; pp. 29 - 39
Main Author 程, 斯
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本アニメーション学会 31.03.2023
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ISSN1347-300X
2435-1989
DOI10.34370/jjas.23.2_29

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Summary:本稿は1980年代の「第二次アニメブーム」、「第二次声優ブーム」、そして「やおいブーム」が合流した地点で生まれた「カセットJUNE」に着目する。アニメで蓄積された声と声優に対する熱狂を引き継ぎながら、女性向け文化の領域で新たな聴取経験を築いたコンテンツである「カセットJUNE」の最初の二作であるカセット「鼓ヶ淵」とカセット「間の楔」、およびこの二作に寄せられた当時の聴き手のコメントを対象として、それらがいかなる聴取経験を提供し、そして聴き手といかにやり取りしたかについて分析を行う。成人男性の声を直接聴き手の耳元で響かせた「カセットJUNE」は、従来の少年愛マンガや小説とは異なるような、身体全体に触覚的に作用する聴覚的快楽を聴き手に供したが、それだけではなく、聴き手コメントというコミュニケーションのツールを聴き手に開放したことによって、聴き手をその聴覚的快楽をめぐる交渉に参加させた。
ISSN:1347-300X
2435-1989
DOI:10.34370/jjas.23.2_29