症例 房室結節三重伝導路の関与が示唆されたfast-slow型房室結節回帰性頻拍の1例

電気生理学的検査により房室結節三重伝導路の存在が示唆され,さらにfast-slow型の房室結節回帰性頻拍(AVNRT)を誘発し得た1症例を経験したので報告する.症例は56歳の男性で,動悸発作を主訴として入院した.心電図所見で早期興奮は認めなかった.心房早期刺激法にて房室伝導遅延を伴わずに頻拍周期400msec,AH130msec,HA270msecのfast-slow型AVNRTが誘発され,さらに早期刺激の連結期を短縮させると突然の房室伝導時間の延長に伴いslow-fast型の房室結節回帰性心房エコーが誘発された.刺激周期長600msecの心室刺激により逆行性伝導時間は130msecと260m...

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Published in心臓 Vol. 19; no. 10; pp. 1260 - 1267
Main Authors 池田, 孝之, 高田, 重男, 布田, 伸一, 久保田, 幸次, 中山, 章, 服部, 信, 中村, 暁
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1987
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.19.10_1260

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Summary:電気生理学的検査により房室結節三重伝導路の存在が示唆され,さらにfast-slow型の房室結節回帰性頻拍(AVNRT)を誘発し得た1症例を経験したので報告する.症例は56歳の男性で,動悸発作を主訴として入院した.心電図所見で早期興奮は認めなかった.心房早期刺激法にて房室伝導遅延を伴わずに頻拍周期400msec,AH130msec,HA270msecのfast-slow型AVNRTが誘発され,さらに早期刺激の連結期を短縮させると突然の房室伝導時間の延長に伴いslow-fast型の房室結節回帰性心房エコーが誘発された.刺激周期長600msecの心室刺激により逆行性伝導時間は130msecと260msecの2種類の値を示した.また,基本心周期長500msecの心室早期刺激法により逆行性伝導時間は270-320msecと430-440msecの2種類の値を示し,早期興奮の逆行性伝導時間が後者の値を示した場合にAH130msec,HA270msecのfast-slow型AVNRTが誘発された.逆行性心房内興奮順序は,心室頻回刺激あるいは心室早期刺激によるいずれの逆行性伝導時間の場合においてもヒス東電位記録部位の低位右房,左房,高位右房の順であり頻拍中のそれと一致した.また,頻拍中に与えた心房早期刺激は頻拍周期に影響せず,ヒス束の不応期に与えた心室刺激による奇異性心房捕捉はみられなかった.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.19.10_1260