症例 躁うつ病の病相に従って寛解,増悪を繰り返した冠攣縮性狭心症の1例

躁うつ病の病相に伴って冠攣縮性狭心症の寛解,増悪を経験した症例を報告する.症例は57歳男性で主訴は夜間安静時胸痛,父,姉,弟に安静時狭心症があり父,姉は急性心臓死.心理テストでは軽うつ傾向,失感情症を認めた.冠動脈造影上有意冠狭窄はなくエルゴノビン負荷にて冠攣縮性狭心症の診断となる.3年8カ月のフォローアップ中1回の躁病相と3回のうつ病相とさらに3回のストレスイベントを経験し,いずれの場合でも1ないし4週間のタイムラグを経て冠攣縮性狭心症増悪をきたした.狭心症増悪に対して,抗狭心症薬の強化,躁うつ病の治療,ストレスマネージメントのいずれも有効であった.特にうつ病相では,抗うつ薬のみで狭心症増悪...

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Published in心臓 Vol. 25; no. 11; pp. 1325 - 1330
Main Authors 尾池, 雄一, 松村, 敏幸, 緒方, 康博, 沼田, 裕一, 春口, 洋賜, 脇田, 富男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1993
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.25.11_1325

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Summary:躁うつ病の病相に伴って冠攣縮性狭心症の寛解,増悪を経験した症例を報告する.症例は57歳男性で主訴は夜間安静時胸痛,父,姉,弟に安静時狭心症があり父,姉は急性心臓死.心理テストでは軽うつ傾向,失感情症を認めた.冠動脈造影上有意冠狭窄はなくエルゴノビン負荷にて冠攣縮性狭心症の診断となる.3年8カ月のフォローアップ中1回の躁病相と3回のうつ病相とさらに3回のストレスイベントを経験し,いずれの場合でも1ないし4週間のタイムラグを経て冠攣縮性狭心症増悪をきたした.狭心症増悪に対して,抗狭心症薬の強化,躁うつ病の治療,ストレスマネージメントのいずれも有効であった.特にうつ病相では,抗うつ薬のみで狭心症増悪を寛解しえたことは,うつ病によるストレスと冠攣縮性狭心症増悪との関連性を示唆していると考えられた.この症例は過剰な社会適応傾向をもち常に慢性ストレス下にあり,さらに躁うつ病などの急性ストレスが加わることによって冠攣縮性狭心症増悪をきたしたと考えられ,冠攣縮性狭心症患者管理に重要な示唆を受けた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.25.11_1325