症例 広範囲ST低下を呈したバルサルバ洞動脈瘤破裂の1例

症例は24歳男性.1998年2月16日の正午より動悸,呼吸困難が出現し急性心不全を疑われ,当院の集中治療室に紹介入院となる.心電図は正常洞調律で頻脈,I,II,III,aVFとV3~6誘導と広範囲のST低下を認めた.経食道心エコー図では右冠動脈洞に浮遊性の膜様構造物を認め,収縮期に右冠動脈洞から右心房への左右シャントを認めた.右心カテーテル検査にて右心房における酸素飽和度の増加,肺体血流比は6.9と計算され,今野IIIa型のバルサルバ洞動脈瘤破裂と診断された.冠動脈造影では有意な冠動脈狭窄はなく,大動脈造影にてバルサルバ洞から右心房へのジェットを認めた.緊急に右バルサルバ洞動脈瘤修復術が施行さ...

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Published in心臓 Vol. 32; no. 11; pp. 897 - 901
Main Authors 田中, 茂夫, 高野, 照夫, 和田, 健太郎, 高山, 守正, 大久保, 直子, 安武, 正弘, 上村, 竜太, 関戸, 司久, 矢島, 俊己
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2000
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.32.11_897

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Summary:症例は24歳男性.1998年2月16日の正午より動悸,呼吸困難が出現し急性心不全を疑われ,当院の集中治療室に紹介入院となる.心電図は正常洞調律で頻脈,I,II,III,aVFとV3~6誘導と広範囲のST低下を認めた.経食道心エコー図では右冠動脈洞に浮遊性の膜様構造物を認め,収縮期に右冠動脈洞から右心房への左右シャントを認めた.右心カテーテル検査にて右心房における酸素飽和度の増加,肺体血流比は6.9と計算され,今野IIIa型のバルサルバ洞動脈瘤破裂と診断された.冠動脈造影では有意な冠動脈狭窄はなく,大動脈造影にてバルサルバ洞から右心房へのジェットを認めた.緊急に右バルサルバ洞動脈瘤修復術が施行され,術後より良好な経過にて3月2日に退院した.バルサルバ洞動脈瘤破裂の頻度は先天性心疾患手術例の0.14-1.5%とまれな疾患である.破裂例では急速な左右シャントによる代償不能な心不全に陥ることが多く,心不全への内科的治療を行いながら速やかに外科的根治術を要し,心筋虚血は重度の大動脈弁閉鎖不全症または冠動脈解離の合併例にて報告される.本例は入院時に心電図で広範囲ST低下を示したが大動脈弁および冠動脈は正常であり,広範囲の心筋虚血の原因は心原性ショックおよび高流量シャントによる冠血流減少と推測された.バルサルバ洞動脈瘤破裂にて大動脈弁および冠動脈に合併のない例での広範囲虚血性変化はまれであり報告した.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.32.11_897