在宅における患者家族の介護および多職種での介入により経口摂取再開および日常生活動作の改善を認めた1症例

緒言:在宅での介護が推奨される状況において,高齢者の在宅療養を支える家族の存在はさらに重要となっている。今回,脳梗塞後在宅退院した高齢患者が経口摂取を再開し,日常生活動作の改善を認めた。その家族の介護力を把握し,家族への援助について考察した1例を報告する。 症例:患者は脳梗塞を発症し,胃瘻造設後に経管栄養のみの状態であった。嚥下内視鏡検査にて,口腔咽頭移送時間の延長と嚥下反射惹起遅延を認めた。 経過と考察:家族に日中リズムを整えることを指導し,姿勢調整のうえ,経口摂取を再開した。家族は患者を毎朝車椅子に移乗させ,機能に応じた嚥下調整食を準備し,また編集した脳梗塞発症前の患者の動画をベッドサイド...

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Published in老年歯科医学 Vol. 38; no. supplement; pp. 18 - 23
Main Authors 菊谷, 武, 市川, 陽子, 田村, 文誉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年歯科医学会 30.09.2023
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ISSN0914-3866
1884-7323
DOI10.11259/jsg.38.supplement_18

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Summary:緒言:在宅での介護が推奨される状況において,高齢者の在宅療養を支える家族の存在はさらに重要となっている。今回,脳梗塞後在宅退院した高齢患者が経口摂取を再開し,日常生活動作の改善を認めた。その家族の介護力を把握し,家族への援助について考察した1例を報告する。 症例:患者は脳梗塞を発症し,胃瘻造設後に経管栄養のみの状態であった。嚥下内視鏡検査にて,口腔咽頭移送時間の延長と嚥下反射惹起遅延を認めた。 経過と考察:家族に日中リズムを整えることを指導し,姿勢調整のうえ,経口摂取を再開した。家族は患者を毎朝車椅子に移乗させ,機能に応じた嚥下調整食を準備し,また編集した脳梗塞発症前の患者の動画をベッドサイドで再生するというようなかかわりもみられた。介入1カ月後より意識レベルの改善がみられ,6カ月半後には500 kcal/dayを経口摂取可能になり,訓練時に介助で立位が可能となった。在宅介護スコアや質問用紙での評価にて家族の介護力はバランス良く高く,家族を含めた患者へのかかわりが日常生活動作の改善の一助となったと考えられたが,主介護者の介護負担は上昇した。現在も訪問ごとに介護負担の程度を聴取し,介護食の調理法などの情報提供や介護者の悩みを聴くサポートを行っている。今後も患者とその家族の生活の質を守るため,多職種による継続したかかわりが重要と考えられる。
ISSN:0914-3866
1884-7323
DOI:10.11259/jsg.38.supplement_18