特集—保険適用となった圧迫療法 日本静脈学会弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター養成委員会報告 リンパ浮腫と圧迫療法

リンパ浮腫の治療には,古くから複合的理学療法と呼ばれる保存的治療が行われているが,とくに圧迫療法を欠かすことができない.リンパ浮腫はリンパ管系に異常があり,リンパ還流障害によって運搬されるべき組織間液が増加して発症する.組織間液は毛細血管から漏出して増加するため,患肢を圧迫して静脈圧を下げ組織間圧を上げることにより,組織間液は増加せずリンパ浮腫の悪化を防ぐことができる.また同時に静脈・リンパ管の機能も改善できる.ただし不適切な圧迫療法は,着用して患肢に食い込むことで逆に症状を悪化させることがある.上肢リンパ浮腫に使用する弾性スリーブ・グローブは,手・肘関節や上腕中枢で食い込みやすく,下肢リンパ...

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Published in静脈学 Vol. 32; no. 1; pp. 37 - 44
Main Author 小川, 佳宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本静脈学会 30.04.2021
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ISSN0915-7395
2186-5523
DOI10.7134/phlebol.20-23-4

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Summary:リンパ浮腫の治療には,古くから複合的理学療法と呼ばれる保存的治療が行われているが,とくに圧迫療法を欠かすことができない.リンパ浮腫はリンパ管系に異常があり,リンパ還流障害によって運搬されるべき組織間液が増加して発症する.組織間液は毛細血管から漏出して増加するため,患肢を圧迫して静脈圧を下げ組織間圧を上げることにより,組織間液は増加せずリンパ浮腫の悪化を防ぐことができる.また同時に静脈・リンパ管の機能も改善できる.ただし不適切な圧迫療法は,着用して患肢に食い込むことで逆に症状を悪化させることがある.上肢リンパ浮腫に使用する弾性スリーブ・グローブは,手・肘関節や上腕中枢で食い込みやすく,下肢リンパ浮腫に使用する弾性ストッキングは,足・膝関節や大腿中枢で食い込みやすく注意が必要である.患肢に食い込みにくい圧迫療法には,患肢の状態に合った圧迫力・素材・形状などを選択できる治療経験が重要である.
ISSN:0915-7395
2186-5523
DOI:10.7134/phlebol.20-23-4