症例 カテーテル焼灼術により下大静脈―三尖弁輪間峡部の反時計方向の不完全伝導ブロックのみられた心房粗動の1例

通常型心房粗動(AFL)の高周波カテーテル焼灼術では,リエントリー回路の一部である下大静脈―三尖弁輪(IVC-TA)間峡部を連続焼灼しこの部位での伝導ブロックを作成する方法が有効である.症例は65歳,男性.通常型AFLの発作中にpost-pacing interva1を測定し,IVC-TA間峡部がリエントリー回路の一部であることを確認した.その後,洞調律時の低位外側右房(LLRA)刺激中にIVC-TA間峡部の連続線状焼灼術を施行した.焼灼中,LLRA-冠状静脈洞(CS)間に完全伝導ブロックに相当すると考えられる伝導時間の延長を確認したが,20分後にその伝導時間が短縮した.その際,LLRA右房前...

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Published in心臓 Vol. 30; no. 11; pp. 707 - 712
Main Authors 鈴木, 紅, 山本, 直人, 佐藤, 正, 戸坂, 俊雅, 比江嶋, 一昌, 平尾, 見三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1998
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.30.11_707

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Summary:通常型心房粗動(AFL)の高周波カテーテル焼灼術では,リエントリー回路の一部である下大静脈―三尖弁輪(IVC-TA)間峡部を連続焼灼しこの部位での伝導ブロックを作成する方法が有効である.症例は65歳,男性.通常型AFLの発作中にpost-pacing interva1を測定し,IVC-TA間峡部がリエントリー回路の一部であることを確認した.その後,洞調律時の低位外側右房(LLRA)刺激中にIVC-TA間峡部の連続線状焼灼術を施行した.焼灼中,LLRA-冠状静脈洞(CS)間に完全伝導ブロックに相当すると考えられる伝導時間の延長を確認したが,20分後にその伝導時間が短縮した.その際,LLRA右房前中隔(ヒス束部:HB)間の延長した伝導時間には変化がなかったため,興奮はLLRA-HB間は時計方向に伝導している一方で,LLRA-CS間には反時計方向の伝導が不完全に回復したと考えられた.よって,IVC-TA間峡部のブロックラインの形成は不完全と判断し,同部位に焼灼追加は行い,最終的にはLLRA-CS間の反時計方向および時計方向の完全伝導ブロックを確認し終了した.その後12カ月の経過観察中動悸は消失している.通常型AFLの連続線状焼灼術を行う際に,再発防止の観点から最終的にLLRA-CS間の完全伝導ブロックを確認することが重要とされているが,本症例では焼灼術の終了点の決定において参考となる反時計方向の不完全ブロックが確認できた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.30.11_707