地域で暮らす統合失調症者のリカバリーレベルと背景要因との関連

本研究の目的は,地域で暮らす統合失調症者におけるリカバリーレベルと背景要因との関連を明らかにすることである。地域で暮らす統合失調症者157名を対象にアンケート調査を実施した。リカバリーは,24項目版Recovery Assessment Scale日本語版(RAS)を用いて,リカバリーレベルを測定した。RASは5つの下位尺度で構成されている。背景要因は,性別,年齢,発症年齢,副作用の有無,病気体験で得たこと,ピアサポート,就労状況,地区行事への参加有無とした。男性90名(57.3%),平均年齢は(SD)46.7(12.9)歳であった。発症年齢(SD)25.6(8.7)歳,副作用がある人は51名...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本健康医学会雑誌 Vol. 25; no. 4; pp. 335 - 339
Main Authors 藤野, 裕子, 藤本, 裕二, 楠葉, 洋子, 松浦, 江美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本健康医学会 21.02.2017
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1343-0025
2423-9828
DOI10.20685/kenkouigaku.25.4_335

Cover

More Information
Summary:本研究の目的は,地域で暮らす統合失調症者におけるリカバリーレベルと背景要因との関連を明らかにすることである。地域で暮らす統合失調症者157名を対象にアンケート調査を実施した。リカバリーは,24項目版Recovery Assessment Scale日本語版(RAS)を用いて,リカバリーレベルを測定した。RASは5つの下位尺度で構成されている。背景要因は,性別,年齢,発症年齢,副作用の有無,病気体験で得たこと,ピアサポート,就労状況,地区行事への参加有無とした。男性90名(57.3%),平均年齢は(SD)46.7(12.9)歳であった。発症年齢(SD)25.6(8.7)歳,副作用がある人は51名(33.3%),病気体験により得られたことがあると回答した人115名(73.2%)であった。ピアサポート経験者は25名(15.9%),就労者は92名(58.6%),地区行事へ参加している人は45名(28.7%)であった。RAS得点(SD)は83.6(15.1)点,下位項目得点では「他者への信頼」が最も高く3.6点,「自信をもつこと」が3.2点と最も低かった。病気体験により得られたことがあると回答した人のRAS得点は無群に比べて有意に高かった(p=0.000)。また,ピアサポート経験者(p=0.024),地区行事への参加者(p=0.006)は無群に比べてRAS得点が有意に高かった。さらに,年齢とRAS得点に弱い相関がみられた(γ=0.160)。リカバリーにおいて,病気を自己の人生の中で意味ある体験に変えることが肯定的な人生観へと繋がっていることが推察される。また,ピアサポートの要素を取り入れた支援や介入プログラムを行うことで,リカバリーがより促進されることが考えられる。地区行事への参加は,社会からの偏見を払拭し,社会に対する信頼回復の契機となっていることが考えられる。さらに,リカバリーは人生の回復であり,発症年齢や罹患期間ではなく,人生経験を重ねたことによる成長が影響している可能性がある。
ISSN:1343-0025
2423-9828
DOI:10.20685/kenkouigaku.25.4_335