救急医療現場での認知症患者の急増

認知症患者数は年々増加しており,それに伴い認知症患者の救急外来受診も増加していると推定される.加齢による生理的変化や認知機能障害の影響のため,救急外来での認知症患者の診療はしばしば困難を伴うことから医療現場の負担増加につながっている.さらに認知症患者の入院はせん妄等の合併症をきたしやすく,また入院することにより認知機能が増悪し得ると考えられている.筆者らが関連施設で行った検討では,2次救急病院においては救急外来受診者の15.4%が認知症患者で,そのうち54.9%が入院を要し,平均入院期間は33.4±1.0日であった.一方3次救急病院では認知症患者は3.3%と比較的低率であったが,入院率は75....

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 56; no. 1; pp. 6 - 14
Main Authors 佐々木, 諒, 藤木, 茂篤, 涌谷, 陽介, 高尾, 芳樹, 田所, 功, 竹中, 龍太, 阿部, 康二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 25.01.2019
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.56.6

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Summary:認知症患者数は年々増加しており,それに伴い認知症患者の救急外来受診も増加していると推定される.加齢による生理的変化や認知機能障害の影響のため,救急外来での認知症患者の診療はしばしば困難を伴うことから医療現場の負担増加につながっている.さらに認知症患者の入院はせん妄等の合併症をきたしやすく,また入院することにより認知機能が増悪し得ると考えられている.筆者らが関連施設で行った検討では,2次救急病院においては救急外来受診者の15.4%が認知症患者で,そのうち54.9%が入院を要し,平均入院期間は33.4±1.0日であった.一方3次救急病院では認知症患者は3.3%と比較的低率であったが,入院率は75.8%とより高率であった.施設の性質によりこのような違いはあるものの,認知症患者の救急受診,緊急入院の増加や,入院の長期化は,あらゆる医療機関において今後ますます重大な問題となることが予想される.これらの問題の解決のためには,外来対応可能な状態での入院や,介護サービス・入所施設の調整などに起因する入院期間の長期化を抑制することが有効であると考えられる.認知症患者における外来診療の適正化に加え,新オレンジプランに示されるような医療機関・介護間での連携,地域全体での認知症ケア,介護者への支援等の充実による認知症患者・介護者のケアを向上が望まれる.訪問診療は受診が困難な認知症患者の身体合併症の予防,早期発見に有用であるが,限られた医療資源にあっては近年発展している通信デバイスを用いた遠隔診療(telemedicine)を組み合わせることが今後の認知症患者の診療において重要と考える.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.56.6