フランスの思考表現スタイルと政治的教養の育成 アメリカとの比較から
本稿は日本の政治教育でも習得が求められている政治的教養とその育成を、フランスを例にひとつのモデルとして提示する。政治的知識は「合意された手段」を使って権利を行使するための知識と技術を指すが、政治的教養はそれらの知識・技術を使って判断したり実際の政治行動に結びつけたりする「価値」をも視野にいれたものと定義する。フランスでは合意を得る手段として、歴史を根拠にことばの定義を行い、異なる視点を突き合わせてその矛盾を解決する〈弁証法〉が書いたり討論したりする方法として用いられており、初等教育からこの様式習得のための教育が行われている。この思考と表現の型―思考表現スタイル―に歴史教育が根拠となる「材料」を...
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| Published in | 教育学研究 Vol. 84; no. 2; pp. 180 - 191 |
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| Main Author | |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
一般社団法人 日本教育学会
30.06.2017
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| Subjects | |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0387-3161 2187-5278 |
| DOI | 10.11555/kyoiku.84.2_180 |
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| Summary: | 本稿は日本の政治教育でも習得が求められている政治的教養とその育成を、フランスを例にひとつのモデルとして提示する。政治的知識は「合意された手段」を使って権利を行使するための知識と技術を指すが、政治的教養はそれらの知識・技術を使って判断したり実際の政治行動に結びつけたりする「価値」をも視野にいれたものと定義する。フランスでは合意を得る手段として、歴史を根拠にことばの定義を行い、異なる視点を突き合わせてその矛盾を解決する〈弁証法〉が書いたり討論したりする方法として用いられており、初等教育からこの様式習得のための教育が行われている。この思考と表現の型―思考表現スタイル―に歴史教育が根拠となる「材料」を提供し、市民性教育が「概念」を与え、フランス語教育が「感情」を育み、それらが統合されて政治的教養が習得される過程をフランスの学校調査から明らかにする。結論では政治教育における3つの課題―①主体性の育成と教育の価値中立性、②生徒の政治行動への準備、③多元的な社会における政治教育―にフランスのモデルがいかに応えているかを示す。 |
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| ISSN: | 0387-3161 2187-5278 |
| DOI: | 10.11555/kyoiku.84.2_180 |