HEART's Original [症例] A型大動脈解離に合併した限局性の大動脈弁交連部断裂による大動脈弁閉鎖不全症の1例

大動脈弁閉鎖不全症の原因としては,大動脈弁の先天的要因,後天性器質的変化(リウマチ性,感染性心内膜炎,梅毒,動脈硬化など),上行大動脈および大動脈弁輪の異常(解離性動脈瘤,大動脈弁輪拡張症,大動脈炎など)がある.なかでも急性型の原因としては,一般的に,感染,大動脈解離,外傷が挙げられるが,急性発症での孤立性の大動脈弁交連部の断裂もまれながら報告されている.今回,慢性炎症性腸疾患で長期治療中の患者に発症した,交連部断裂による急性大動脈弁閉鎖不全に明らかに病変の連続性がない上行大動脈解離を合併した症例を経験した. 症例は61歳の女性で,呼吸苦を主訴に来院した.潰瘍性大腸炎で長期治療中であるものの,...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in心臓 Vol. 37; no. 9; pp. 743 - 746
Main Authors 森山, 由紀則, 網谷, 滋, 宮原, 健吉, 浜田, 直和, 佐多, 直幸, 田上, 和幸, 堀之内, 尚志, 山下, 拓哉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2005
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.37.9_743

Cover

More Information
Summary:大動脈弁閉鎖不全症の原因としては,大動脈弁の先天的要因,後天性器質的変化(リウマチ性,感染性心内膜炎,梅毒,動脈硬化など),上行大動脈および大動脈弁輪の異常(解離性動脈瘤,大動脈弁輪拡張症,大動脈炎など)がある.なかでも急性型の原因としては,一般的に,感染,大動脈解離,外傷が挙げられるが,急性発症での孤立性の大動脈弁交連部の断裂もまれながら報告されている.今回,慢性炎症性腸疾患で長期治療中の患者に発症した,交連部断裂による急性大動脈弁閉鎖不全に明らかに病変の連続性がない上行大動脈解離を合併した症例を経験した. 症例は61歳の女性で,呼吸苦を主訴に来院した.潰瘍性大腸炎で長期治療中であるものの,明らかな外傷などの既往はない.精査の結果,A型大動脈解離に伴う大動脈弁閉鎖不全(AR)IV度と診断し,体外循環下に根治術を施行した.手術所見ではARの原因は別個に発生した大動脈弁交連部の断裂であり,大動脈解離病変との連続性はなかった.その発症の機序については断定できないが,連続性のない上行大動脈解離と大動脈弁の交連部の断裂が別個に存在したことはまれな例と考えられ,今回報告した.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.37.9_743