症例 3種類の上室性頻拍の一期的カテーテル・アブレーションに成功した潜在性WPW症候群の1例

高周波を用いたカテーテル・アブレーション(CA)により,一期的に3種類の上室性頻拍(SVT)を治療し得た1例を経験した.症例は60歳,女性.薬剤抵抗性のSVTに対するCA目的にて入院となった.体表12誘導心電図にて洞調律時にデルタ波は認められなかった.電気生理学的検査では,(1)slow pathwayを順行路としfast pathwayを逆行路とする房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)と,(2)fast pathwayを順行路とし右室自由壁に存在するKent束を逆行路とする房室リエントリー性頻拍(AVRT)の2種類のSVTが誘発された.この2種類のSVTに対する治療として,最初に冠状静脈...

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Published in心臓 Vol. 28; no. 4; pp. 330 - 335
Main Authors 山本, 直人, 平尾, 見三, 縄田, 浩子, 比江嶋, 一昌, 鈴木, 文男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1996
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.28.4_330

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Summary:高周波を用いたカテーテル・アブレーション(CA)により,一期的に3種類の上室性頻拍(SVT)を治療し得た1例を経験した.症例は60歳,女性.薬剤抵抗性のSVTに対するCA目的にて入院となった.体表12誘導心電図にて洞調律時にデルタ波は認められなかった.電気生理学的検査では,(1)slow pathwayを順行路としfast pathwayを逆行路とする房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)と,(2)fast pathwayを順行路とし右室自由壁に存在するKent束を逆行路とする房室リエントリー性頻拍(AVRT)の2種類のSVTが誘発された.この2種類のSVTに対する治療として,最初に冠状静脈洞近傍の右房中隔側にアブレーション用カテーテルを留置し,slow pathwayに対してCAを行い,(1)を誘発不能にした.しかし,通電直後に施行した心室刺激により,通電前には認められなかった新たなSVTが誘発された.詳細な電気生理学的検査とマッピングにより,この頻拍は(3)前中隔に存在するKent束を逆行路とするAVRTと診断された.アブレーション用カテーテルをヒス束近傍の前中隔に留置しC A を行い, ( 3 ) を誘発不能にした. 最後に右室側壁に留置したアブレーション用カテーテルよりCAを行い,(2)を誘発不能にした.術後に施行した電気生理学的検査では(1),(2),(3)のいずれのSVTも誘発されなかった.当症例のように多種類のSVTを有する患者においては,CA施行後に以前は認められなかった頻拍が顕在化することがあり,十分な注意が必要であると考えられた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.28.4_330