臨床 上腕動脈の反応性充血に対する喫煙の急性効果と慢性効果

健常喫煙における血管内皮機能を,超音波法と反応性充血を用いて検討した.対象は喫煙以外に異常のない健常喫煙男性19例,平均33.6±3.4歳,喫煙歴は12.3±6.9pack-yearであり,対照として健常非喫煙男性21例,平均34.4±3.9歳を用いた.喫煙群は検査前日就寝時より禁煙とし,検査は両群ともに昼食前の空腹時に行った.まず上腕動脈の血管径と血流量を計測した後,血圧測定用カフで250mmHgの圧をかけ上腕動脈を閉塞した.5分後に解除して血管径と分時血流量の閉塞前に対する増加率(%FMD,%FVI)から内皮機能を評価した.約12時間禁煙後の喫煙群と非喫煙群の比較では%FMD,%FVIとも...

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Published in心臓 Vol. 34; no. 6; pp. 455 - 461
Main Authors 松山, 裕宇, 岩瀬, 正嗣, 伊藤, さつき, 鯉江, 伸, 梶原, 克祐, 杉本, 邦彦, 菱田, 仁
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2002
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.34.6_455

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Summary:健常喫煙における血管内皮機能を,超音波法と反応性充血を用いて検討した.対象は喫煙以外に異常のない健常喫煙男性19例,平均33.6±3.4歳,喫煙歴は12.3±6.9pack-yearであり,対照として健常非喫煙男性21例,平均34.4±3.9歳を用いた.喫煙群は検査前日就寝時より禁煙とし,検査は両群ともに昼食前の空腹時に行った.まず上腕動脈の血管径と血流量を計測した後,血圧測定用カフで250mmHgの圧をかけ上腕動脈を閉塞した.5分後に解除して血管径と分時血流量の閉塞前に対する増加率(%FMD,%FVI)から内皮機能を評価した.約12時間禁煙後の喫煙群と非喫煙群の比較では%FMD,%FVIともに有意差は認めなかった.次いで喫煙群に紙巻き煙草1本を喫煙させたところ,%FMDが111.9±4.9から106.2±4.2,%FVIが184.1±77.1から147.6±36.6へと有意(p<0.01)に低下し,喫煙直後の値は過去の喫煙量と有意な負の相関を示した.本研究では,喫煙群でも約12時間禁煙後は非喫煙群との間に反応性充血による血管拡張反応には有意差を認めなかったが,喫煙直後の血管内皮機能障害は過去の喫煙量と相関し,喫煙による慢性の内皮機能障害が1本の喫煙により顕性化したもの考えられた.以上のように,喫煙による血管内皮機能障害は急性に生ずるとともに慢性的にも潜在化して存在しうることが示唆された.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.34.6_455