症例 心症状が前景に立ち1年後に洞機能不全をきたした多発性筋炎の1例

症例は45歳の男性.昭和64年1月心不全,1度房室ブロック,心室性期外収縮を認めた.2月CPKの高値,上下肢の筋力低下,筋電図ならびに筋生検所見より多発性筋炎と診断された.4月内服を中断したところ,再び心不全,心室性期外収縮が出現したが,ステロイド,利尿薬,抗不整脈薬の投与で心不全ならびに期外収縮は軽快,また筋力はほぼ正常化,CPK値は低下した.心筋シンチでは心筋のRI集積分布が全体に不均一で,下壁-後壁は集積低下を認めた.冠状動脈には狭窄所見なく,左室造影では全体がhypokineticであり,特にSeg.5,7はakinesisであった.右室筋の生検像では心筋線維の変性に起因する核の腫大と...

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Published in心臓 Vol. 23; no. 8; pp. 924 - 929
Main Authors 一柳, 健次, 山道, 昇, 宮地, 裕文, 明石, 宜博, 青山, 隆彦, 山崎, 義亀與, 村上, 達明, 三船, 順一郎, 嵯峨, 孝, 滝, 鈴佳, 平井, 淳一, 新井, 裕一, 若杉, 隆伸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1991
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.23.8_924

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Summary:症例は45歳の男性.昭和64年1月心不全,1度房室ブロック,心室性期外収縮を認めた.2月CPKの高値,上下肢の筋力低下,筋電図ならびに筋生検所見より多発性筋炎と診断された.4月内服を中断したところ,再び心不全,心室性期外収縮が出現したが,ステロイド,利尿薬,抗不整脈薬の投与で心不全ならびに期外収縮は軽快,また筋力はほぼ正常化,CPK値は低下した.心筋シンチでは心筋のRI集積分布が全体に不均一で,下壁-後壁は集積低下を認めた.冠状動脈には狭窄所見なく,左室造影では全体がhypokineticであり,特にSeg.5,7はakinesisであった.右室筋の生検像では心筋線維の変性に起因する核の腫大と心筋線維間に単核細胞の浸潤を認めた.11月3度目の心不全が出現し,さらに房室接合部調律や7秒の洞停止を認めたため,ペースメーカーの植え込みを行った.本例は多発性筋炎に伴う心筋病変が波及し心不全や心電図異常をきたしたと考えられた.本例は罹病期間が短く骨格筋症状は軽度であるにもかかわらず重篤な心症状が骨格筋症状とほぼ同時に出現し興味深い症例である.また,本症に洞機能不全を合併した報告は少ない.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.23.8_924