症例 著明な拡張性心肥大を呈した心筋炎後心肥大の1剖検例

19歳の時に軽度の高血圧と心電図上著明な左室肥大,巨大陰1生T波を認めた34歳男性.30歳から心不全症状が出現,この時の心電図は低電位で,広範なQ波と幅広いQRSを示した.また左心室の著明な拡張・壁肥厚とびまん性の壁運動低下がみられた.右室心内膜心筋生検にて肥大した心筋細胞の錯綜配列を認めた.34歳で治療抵抗性の心室性頻拍のため死亡.剖検時,心は1,100g,両心室は著明に拡張し,両心室の壁肥厚および非対称性中隔肥厚がみられた.組織学的に心筋には強い錯綜配列を伴う心筋細胞肥大,心筋細胞脱落を伴った著明な間質の線維増生,巣状の心筋壊死,軽度ながらも広範なリンパ球浸潤を認めた.早期には肥大型心筋症...

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Published in心臓 Vol. 20; no. 2; pp. 178 - 183
Main Authors 瀬川, 郁夫, 肥田, 敏比古, 岩崎, 琢也, 田代, 敦, 鈴木, 智之, 茂木, 格, 加藤, 政孝, 松下, 一夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1988
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.20.2_178

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Summary:19歳の時に軽度の高血圧と心電図上著明な左室肥大,巨大陰1生T波を認めた34歳男性.30歳から心不全症状が出現,この時の心電図は低電位で,広範なQ波と幅広いQRSを示した.また左心室の著明な拡張・壁肥厚とびまん性の壁運動低下がみられた.右室心内膜心筋生検にて肥大した心筋細胞の錯綜配列を認めた.34歳で治療抵抗性の心室性頻拍のため死亡.剖検時,心は1,100g,両心室は著明に拡張し,両心室の壁肥厚および非対称性中隔肥厚がみられた.組織学的に心筋には強い錯綜配列を伴う心筋細胞肥大,心筋細胞脱落を伴った著明な間質の線維増生,巣状の心筋壊死,軽度ながらも広範なリンパ球浸潤を認めた.早期には肥大型心筋症の,晩期には拡張型心筋症類似の臨床所見を示し,剖検により心筋炎後心肥大と判断した1例を報告した.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.20.2_178