症例 同胞3人に拡張型心筋症の発症を見た1家系

特発性心筋症の家族内発症例の報告は大部分が肥大型あるいは肥大および拡張をしめす分類不能型で,拡張型の報告は少ない.今回,著者らは同胞5人中3人に典型的拡張型心筋症の発症をみた1家系を経験した.3症例とも,若年発症(19歳から31歳で発症),進行性の心機能低下(確定診断後6カ月から4年の経過で死亡),心電図でV1~V3のR波減高,胸部誘導の深いS波,肢誘導低電位を認め,形態的には,壁肥厚を伴わない著しい左室腔の拡大すなわち単純性拡張を呈し,びまん性の左室壁運動の低下を認めた.長男の死亡2年前の心筋生検組織像では,軽度の心筋変性を,三男の剖検心(重量460g)では,びまん性の心筋細胞萎縮・変性およ...

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Published in心臓 Vol. 19; no. 4; pp. 465 - 470
Main Authors 肥田, 敏比古, 高山, 和夫, 瀬川, 郁夫, 大平, 武志, 茂木, 格, 岡田, 道雄, 田代, 敦, 石川, 恭三, 加藤, 政孝, 津谷, 恒夫, 大沢, 浩
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1987
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.19.4_465

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Summary:特発性心筋症の家族内発症例の報告は大部分が肥大型あるいは肥大および拡張をしめす分類不能型で,拡張型の報告は少ない.今回,著者らは同胞5人中3人に典型的拡張型心筋症の発症をみた1家系を経験した.3症例とも,若年発症(19歳から31歳で発症),進行性の心機能低下(確定診断後6カ月から4年の経過で死亡),心電図でV1~V3のR波減高,胸部誘導の深いS波,肢誘導低電位を認め,形態的には,壁肥厚を伴わない著しい左室腔の拡大すなわち単純性拡張を呈し,びまん性の左室壁運動の低下を認めた.長男の死亡2年前の心筋生検組織像では,軽度の心筋変性を,三男の剖検心(重量460g)では,びまん性の心筋細胞萎縮・変性および巣状線維症を認めた.2例とも心筋細胞の肥大を認めず,程度の差はあるが心筋細胞の変性を主病変とし,形態的には単純性拡張を呈し,典型的な変性型特発性心筋症と思われた.家族性心筋症は種々の臨床像,心臓形態,心筋組織像を呈し,その発症は複数の遺伝子により支配されていると考えられているが,著者らの症例は極めて類似した経過,病態,形態を呈し,心筋細胞の変性をひきおこす何らかの遺伝因子により発症してきたものと考えられ,若干の文献的考察をまじえて報告した.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.19.4_465