第39回河口湖心臓討論会 前駆細胞とサイトカイン遺伝子治療併用による血管新生療法

骨髄単核球細胞を利用した血管新生療法の有効性が認められているが,臨床応用では多量の骨髄液を必要とする.今回われわれは少量の骨髄単核球細胞に,血管増殖因子の一つで血管の発芽や成熟を促すAngiopoietin-1をplasmidの形で併用し,その効果をウサギの下肢虚血モデルにて評価した.ウサギ下肢虚血モデルを作成し,以下の4群で治療効果を評価した.Control群,Angiopoietin-1群:Ang-1 plasmid(500μg),骨髄単核球細胞群:骨髄単核球細胞(1×106),併用群:Ang-1 plasmid+骨髄単核球細胞(1×106).Plasmidはday 7,骨髄単核球細胞はd...

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Published in心臓 Vol. 38; no. 2; pp. 205 - 210
Main Authors 室原, 豊明, 小林, 光一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2006
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.38.2_205

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Summary:骨髄単核球細胞を利用した血管新生療法の有効性が認められているが,臨床応用では多量の骨髄液を必要とする.今回われわれは少量の骨髄単核球細胞に,血管増殖因子の一つで血管の発芽や成熟を促すAngiopoietin-1をplasmidの形で併用し,その効果をウサギの下肢虚血モデルにて評価した.ウサギ下肢虚血モデルを作成し,以下の4群で治療効果を評価した.Control群,Angiopoietin-1群:Ang-1 plasmid(500μg),骨髄単核球細胞群:骨髄単核球細胞(1×106),併用群:Ang-1 plasmid+骨髄単核球細胞(1×106).Plasmidはday 7,骨髄単核球細胞はday 10に大腿内転筋に筋肉内投与した.Day 35に血管造影,組織酸素分圧(TcO2,)などの測定を行い新生血管を評価した.また,マウスの耳にrecombinantAng-1(150ng),骨髄細胞(1.5×105)を皮下注射し,微小血管を観察した.Ang-1群においてangiographic score,capillary densityはcontrol群に比較して有意な増加を認めたものの,TcO2・下肢の潰瘍は改善をみなかった.併用群ではangiographic score,capillary densityだけではなく,TcO2,下肢の潰瘍においても有意な改善効果を示し,骨髄細胞単独群に比して増強していた.また,マウスの耳においてはrecombinant Ang-1蛋白の投与により異常な形状を示す新生血管が観察されたが,骨髄細胞の併用により形態異常の改善をみた.Ang-1の単独療法では血管増生を認めるが,潰瘍所見やTcO2の改善をみなかった.単核球細胞併用により著明な治療効果を示し,その効果は骨髄細胞単独群より増強した.マウスの耳での観察から,Ang-1による異常血管の形成がウサギ下肢での微小循環悪化の原因であることが示唆され,その走行異常は骨髄細胞の併用により改善された.以上からAng-1遺伝子と骨髄単核球細胞の併用療法は,骨髄細胞の必要量を減らし,機能的な血管新生を促すと考えられた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.38.2_205