症例 心臓原発血管肉腫の1例

心臓原発の腫瘍は全剖検例の0.017~0.28%であり,このうちの20~30%が悪性腫瘍であると報告されており,血管肉腫はこの悪性腫瘍のうちの約30%を占めるとされている.初発症状としては心嚢液貯留や右心系の圧排によるものがほとんどであり,心不全あるいは心嚢炎として見過ごされることが多く,また病勢の進行が早いため生前に発見されることは少ない.今回我々は心タンポナーデによる意識喪失により発見され,心臓腫瘍の疑いで手術を行った1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する. 症例は67歳男性で,意識喪失のため緊急入院となった.精査の結果,心タンポナーデと診断され,心嚢穿刺で血性心嚢液を600m...

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Published in心臓 Vol. 26; no. 6; pp. 635 - 638
Main Authors 西山, 勝彦, 中嶋, 俊介, 大賀, 興一, 島田, 順一, 岡, 隆宏, 高橋, 章之, 早藤, 昌樹, 平井, 二郎, 和田, 行雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1994
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.26.6_635

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Summary:心臓原発の腫瘍は全剖検例の0.017~0.28%であり,このうちの20~30%が悪性腫瘍であると報告されており,血管肉腫はこの悪性腫瘍のうちの約30%を占めるとされている.初発症状としては心嚢液貯留や右心系の圧排によるものがほとんどであり,心不全あるいは心嚢炎として見過ごされることが多く,また病勢の進行が早いため生前に発見されることは少ない.今回我々は心タンポナーデによる意識喪失により発見され,心臓腫瘍の疑いで手術を行った1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する. 症例は67歳男性で,意識喪失のため緊急入院となった.精査の結果,心タンポナーデと診断され,心嚢穿刺で血性心嚢液を600ml排出した.その後のCT,MRIで心臓腫瘍が発見され,手術を行った.腫瘍は右心房の前面と右心房の右側,肺動脈の左側の3カ所に存在していたが右心房前面の腫瘍は三尖弁を越え右室にまで浸潤していたため,肺動脈左側の腫瘍のみ摘出した.この腫瘍は術後の病理検査で血管肉腫と診断された. 本症は非常に予後不良の疾患であり,早期発見と手術による腫瘍摘出が,予後の改善の上で重要であると考えられる.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.26.6_635