症例 冠状動脈起始異常症の6例

冠状動脈起始異常症は冠状動脈奇形のひとつであるが,急性心筋梗塞症や突然死との関連が指摘されている.我々は最近,左前下行枝が右バルサルバ洞に起始し,有意狭窄がないにもかかわらず左室前壁領域の虚血を生じた症例を経験した.当科ではこれまで6例の冠状動脈起始異常症を経験した.今回経験した症例を提示し,6例についての臨床所見をまとめ報告した.3例は右冠状動脈が左バルサルバ洞に起始した症例,2例は回旋枝が右バルサルバ洞に起始した症例,1例は左前下行枝が右バルサルバ洞に起始した症例であった.いずれの症例も,起始異常を呈した冠状動脈は,大動脈と肺動脈の間を通過していた.このうち3例に心筋虚血所見を認めた. 冠...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in心臓 Vol. 34; no. 9; pp. 725 - 730
Main Authors 柴田, 雅士, 平盛, 勝彦, 茂木, 格, 瀬川, 利恵
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2002
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.34.9_725

Cover

More Information
Summary:冠状動脈起始異常症は冠状動脈奇形のひとつであるが,急性心筋梗塞症や突然死との関連が指摘されている.我々は最近,左前下行枝が右バルサルバ洞に起始し,有意狭窄がないにもかかわらず左室前壁領域の虚血を生じた症例を経験した.当科ではこれまで6例の冠状動脈起始異常症を経験した.今回経験した症例を提示し,6例についての臨床所見をまとめ報告した.3例は右冠状動脈が左バルサルバ洞に起始した症例,2例は回旋枝が右バルサルバ洞に起始した症例,1例は左前下行枝が右バルサルバ洞に起始した症例であった.いずれの症例も,起始異常を呈した冠状動脈は,大動脈と肺動脈の間を通過していた.このうち3例に心筋虚血所見を認めた. 冠状動脈起始異常症が心筋虚血をきたす機序は明らかでないが,起始異常のある冠状動脈が大動脈から鋭角的に分岐し,開口部がスリット状になり冠血流が阻害される可能性や,冠状動脈が大動脈と肺動脈を通過する症例では,冠状動脈が運動時に血流の増加した両血管により圧迫される可能性などが考えられている.今後,これら6症例について注意深い経過観察が必要と考える.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.34.9_725