症例 大動脈解離と冠攣縮性狭心症を伴った大動脈炎症候群の1例

症例は,47歳,女性.26歳時,左橈骨動脈拍動微弱を指摘され,45歳より1年に数回,早朝安静時に胸部圧迫感を自覚するようになった.1998年(47歳),入浴中胸背部痛を自覚し,その後も夜になると背部痛と発熱が出現するため当院を受診,入院となった.上肢血圧は,右138/52mmHg,左62/40mmHgと著明な左右差が認められた.胸部X線写真において,下行大動脈に線状の石灰化所見と軽度心拡大を認めた.大動脈造影上,左鎖骨下動脈の閉塞と右鎖骨下動脈の狭窄を認め,肺血流スキャンでは,亜区域性の灌流低下域が存在した.さらに,大動脈CTスキャンで,大動脈弓遠位部より下行大動脈にかけて,大動脈壁のほぼ全周...

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Published in心臓 Vol. 32; no. 6; pp. 507 - 511
Main Authors 土谷, 武嗣, 伊藤, 順, 名村, 正伸, 緒方, 祐子, 林, 研至, 上西, 博章, 野路, 善博, 千間, 純二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2000
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.32.6_507

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Summary:症例は,47歳,女性.26歳時,左橈骨動脈拍動微弱を指摘され,45歳より1年に数回,早朝安静時に胸部圧迫感を自覚するようになった.1998年(47歳),入浴中胸背部痛を自覚し,その後も夜になると背部痛と発熱が出現するため当院を受診,入院となった.上肢血圧は,右138/52mmHg,左62/40mmHgと著明な左右差が認められた.胸部X線写真において,下行大動脈に線状の石灰化所見と軽度心拡大を認めた.大動脈造影上,左鎖骨下動脈の閉塞と右鎖骨下動脈の狭窄を認め,肺血流スキャンでは,亜区域性の灌流低下域が存在した.さらに,大動脈CTスキャンで,大動脈弓遠位部より下行大動脈にかけて,大動脈壁のほぼ全周にわたる著明な石灰化を認め,DeBakey IIIbの大動脈解離を認めた.また,心臓カテーテルならびに造影検査では,冠動脈に有意狭窄は認められず,冠攣縮誘発試験において,左冠動脈の亜完全閉塞所見とともに,前胸部痛,虚血性心電図変化が認められた.以上より,大動脈解離と冠攣縮性狭心症を伴った大動脈炎症候群と診断した.大動脈炎症候群患者に胸痛や背部痛が認められる場合,大動脈解離や冠攣縮性狭心症をも念頭におく必要があると考えられた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.32.6_507