肝内結石症に於ける選択的胆管充満造影法とその意義
肝内結石症は, 診断ならびに治療の困難な疾患の一つである.最近10年間 (昭和50年8月~昭和60年6月) に教室で経験した肝内結石症は, 16例 (全胆石症584例) 2.7%である.肝切除例を除く11例に胆道鏡を用いた内視鏡的截石術を施行した.内視鏡的截石経路としては, 1) 術中胆道鏡的截石術 (operative cholangioscopy; OC) 1例, 2) 術後胆道鏡的截石術 (postoperative cholangioscopy; POC) 7例, 3) 経皮経肝胆道鏡的截石術 (percutaneus transhepatic cholangioscopy; PTCS...
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Published in | 昭和医学会雑誌 Vol. 47; no. 4; pp. 569 - 575 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
昭和大学学士会
1987
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ISSN | 0037-4342 2185-0976 |
DOI | 10.14930/jsma1939.47.569 |
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Summary: | 肝内結石症は, 診断ならびに治療の困難な疾患の一つである.最近10年間 (昭和50年8月~昭和60年6月) に教室で経験した肝内結石症は, 16例 (全胆石症584例) 2.7%である.肝切除例を除く11例に胆道鏡を用いた内視鏡的截石術を施行した.内視鏡的截石経路としては, 1) 術中胆道鏡的截石術 (operative cholangioscopy; OC) 1例, 2) 術後胆道鏡的截石術 (postoperative cholangioscopy; POC) 7例, 3) 経皮経肝胆道鏡的截石術 (percutaneus transhepatic cholangioscopy; PTCS) 3例であった.いずれの方法に於ても常に截石後の取残しが問題となる.今回, 我々は従来の胆道造影では胆管内ガス像 (pneumobilia) の存在や末梢胆管の塞栓状態などより不十分な造影所見に対して, 経胆道鏡的にベビースコープによる直視的観察を行ったが, 機構上の面で観察は不十分であった.そこで, バルーンカテーテルを用いた選択的胆管充満造影をPOC例7例に試みたところ, 良好な結果を得た.この造影は, バルーンカテーテルを用い, 末梢の胆管胆汁と造影剤を置換し, 気泡の混入の無い鮮明な結石像が得られ, この方法により従来のカテーテルのみの造影では見逃されていた遺残結石症例を3例診断しえた.POC経路のTチューブ瘻孔よりの胆汁培養では, グラム陰性菌が54株 (91.5%, n=60) と高率であった.造影時バルーンカテーテル使用に伴い, 胆管は幾分加圧状態となる.このため細菌の血中への逆行性感染, ひいてはcholangiovenous refluxの発生が危惧されたが, バルーンを用いた本法 (n=15) の検査施行前後の体温, WBC, S-GOT, S-GPT, LDH, AL-Pの変化を対照群のERC (n=20) と比べたが有意の差は認められなかった.胆道鏡下バルーンカテーテル使用による選択的胆管充満造影法は, 肝内結石の胆道鏡的截石術中, 直接内視鏡観察のできない末梢胆管の結石遺残の確認に有用且つ, 安全な検査法である. |
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ISSN: | 0037-4342 2185-0976 |
DOI: | 10.14930/jsma1939.47.569 |