下部消化管内視鏡検査および治療の合併症 高齢群と若年群の比較検討

【目的】近年, 高齢者に対しても大腸癌の精査・治療目的の下部消化管内視鏡検査が頻繁に行われるようになってきました. われわれは, 下部消化管内視鏡を施行された症例を若年群と高齢群に分け, 合併症の発生頻度及びその内容について検討を行いました. 【対象者および方法】1996年に財) 慶應がんセンターにおいて大腸内視鏡を施行された症例のうち, カルテにてその後の経過が確認された565人を65歳未満の若年群 (436人) と, 65歳以上の高齢群 (176人) との2群に分けて検討しました. 二群間比較は Mann-Whitney U-test, 百分率の検定はχ2検定を用い, 危険率5%未満を有意...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 37; no. 12; pp. 990 - 994
Main Authors 谷, 正人, 田中, 資子, 川村, 昌嗣
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 25.12.2000
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.37.990

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Summary:【目的】近年, 高齢者に対しても大腸癌の精査・治療目的の下部消化管内視鏡検査が頻繁に行われるようになってきました. われわれは, 下部消化管内視鏡を施行された症例を若年群と高齢群に分け, 合併症の発生頻度及びその内容について検討を行いました. 【対象者および方法】1996年に財) 慶應がんセンターにおいて大腸内視鏡を施行された症例のうち, カルテにてその後の経過が確認された565人を65歳未満の若年群 (436人) と, 65歳以上の高齢群 (176人) との2群に分けて検討しました. 二群間比較は Mann-Whitney U-test, 百分率の検定はχ2検定を用い, 危険率5%未満を有意としました. 【結果】癌および腺腫を認めた頻度は, 両群間で統計上有意差を認めませんでしたが, 高齢群で多い傾向にありました. 下部消化管内視鏡検査施行時に出現した疼痛に対して鎮静薬などの追加投与を必要とした症例は, 若年群および高齢群で, それぞれ9.4%, 10.2%であり, 有意差を認めませんでした. また止血処置を必要とした出血は, 若年群で0.7%, 高齢群で3.8%と若年群に比し高齢群で有意に多く認めました. また高齢群では2例に潰瘍を認めました. 【結語】高齢群ではポリペクトミー後の出血の頻度が高く, 熱傷性潰瘍や創部の治癒機転の遷延化が示唆され, 下部消化管内視鏡検査終了後に, 腹圧のかかる動作や刺激物の摂取を避けるなどの比較的長期間の安静が必要と考えられました.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.37.990