大動脈瘤のトランスレーショナル・リサーチ 大動脈瘤研究はチャンスの宝庫

医学が長足の進歩を遂げた今日にあっても,原因不明の疾患や決め手となる治療法を欠く疾患は数多い.一方,分子レベルで記述可能になった様々な生命現象が個体レベルでどのように関連しているかが今後の研究の方向性の一つであることは論をまたない.この両者の接点に位置するのが,いわゆるトランスレーショナル・リサーチである.ここでは,その一例として,大動脈瘤の研究動向を紹介する.大動脈瘤は原因不明かつ致死的な疾患で,現時点では薬物治療法が存在せず,従来は不可逆的な病態と考えられていた.最近著者らは,大動脈瘤の治療標的分子として c-Jun N-terminal kinase (JNK) を同定し,その阻害薬によ...

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Published in化学と生物 Vol. 46; no. 3; pp. 180 - 186
Main Authors 青木, 浩樹, 吉村, 耕一, 松崎, 益徳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本農芸化学会 01.03.2008
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ISSN0453-073X
1883-6852
DOI10.1271/kagakutoseibutsu.46.180

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Summary:医学が長足の進歩を遂げた今日にあっても,原因不明の疾患や決め手となる治療法を欠く疾患は数多い.一方,分子レベルで記述可能になった様々な生命現象が個体レベルでどのように関連しているかが今後の研究の方向性の一つであることは論をまたない.この両者の接点に位置するのが,いわゆるトランスレーショナル・リサーチである.ここでは,その一例として,大動脈瘤の研究動向を紹介する.大動脈瘤は原因不明かつ致死的な疾患で,現時点では薬物治療法が存在せず,従来は不可逆的な病態と考えられていた.最近著者らは,大動脈瘤の治療標的分子として c-Jun N-terminal kinase (JNK) を同定し,その阻害薬により大動脈瘤の治癒が可能であることを見いだしたので紹介し,あわせて研究フィールドとしての大動脈瘤について考察する.本解説をお読みいただいた方々が,医学研究の主要なテーマである病態解明と新たな治療法の開発に興味をもってくだされば幸いである.
ISSN:0453-073X
1883-6852
DOI:10.1271/kagakutoseibutsu.46.180