アルツハイマー型痴呆, ダウン症患者の抗コリン剤点眼に対する散瞳過敏反応
ダウン症とアルツハイマー型痴呆患者の抗コリン剤点眼に対する過剰散瞳現象を検討した. 対象は, アルツハイマー型痴呆初老期発症者 (AD) 21名, 同老年期発症者 (SD) 32名, 健常者15名, ダウン症 (DS) 6名, 脳血管性痴呆 (VD) 9名である. 改訂長谷川式スケール (HDSR) スコアの平均値は, AD, SD, VDの3群間で有意差はなかった. 薄暗い部屋に暗順応させた後, Midrin-P®中の tropicamide (抗コリン剤) が0.01%になるように調整した希釈液を片眼に点眼し, 5~10分おきに瞳孔径を計測し, 瞳孔径最大時のデータを各群で比較した. 最大...
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 33; no. 11; pp. 829 - 834 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
25.11.1996
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Subjects | |
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ISSN | 0300-9173 |
DOI | 10.3143/geriatrics.33.829 |
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Summary: | ダウン症とアルツハイマー型痴呆患者の抗コリン剤点眼に対する過剰散瞳現象を検討した. 対象は, アルツハイマー型痴呆初老期発症者 (AD) 21名, 同老年期発症者 (SD) 32名, 健常者15名, ダウン症 (DS) 6名, 脳血管性痴呆 (VD) 9名である. 改訂長谷川式スケール (HDSR) スコアの平均値は, AD, SD, VDの3群間で有意差はなかった. 薄暗い部屋に暗順応させた後, Midrin-P®中の tropicamide (抗コリン剤) が0.01%になるように調整した希釈液を片眼に点眼し, 5~10分おきに瞳孔径を計測し, 瞳孔径最大時のデータを各群で比較した. 最大散瞳量 (点眼直前と最大散瞳時の瞳孔直径の差) は, 健常者で0.51±0.78mmであるのに対して, ADで1.00±0.57mm (有意差), DSで1.49±0.54mm (危険率5%未満で健常者と有意差あり) であり, SDとVDの最大散瞳量は健常者とは全く差がなかった. 散瞳量20%以上の者の割合を見ると, 健常者13.3%, AD 42.9%, SD 28.1%, DS 100%, VD 22.2%となった. 一方69歳以下に限ると, 散瞳量は健常者7名 (平均年齢57.8歳) の0.20±0.75mmに対してAD 18名 (平均年齢67.5歳) の1.12±0.52mm, DSの1.49±0.54mmでいずれも健常者より過敏に散大していた. 散瞳量とHDSRスコアとの相関は各群とも見られなかった. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.33.829 |