高齢者慢性呼吸器疾患患者における睡眠時低酸素血症の予測
高齢者では睡眠時の呼吸に異常をきたしやすく, 慢性呼吸器疾患患者では睡眠時に動脈血酸素分圧が低下することが知られている. わが国では日中安静時の動脈血酸素分圧 (PaO2) が55Torr未満の症例だけでなく, PaO2が55Torr以上でも60Torr以下で睡眠時に著しい低酸素血症を伴う場合には在宅酸素療法の適応とされている. この適応基準を厳密に運用するにはPaO2 55Torr以上60Torr以下のすべての慢性呼吸器疾患患者に対して睡眠時低酸素血症の有無を検索する必要がある. しかし時間と費用がかかり, どの施設でもできるとは限らない. またPaO2が60Torrを越える例にも睡眠時低酸...
Saved in:
| Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 29; no. 12; pp. 953 - 959 |
|---|---|
| Main Authors | , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
一般社団法人 日本老年医学会
01.12.1992
|
| Subjects | |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0300-9173 |
| DOI | 10.3143/geriatrics.29.953 |
Cover
| Summary: | 高齢者では睡眠時の呼吸に異常をきたしやすく, 慢性呼吸器疾患患者では睡眠時に動脈血酸素分圧が低下することが知られている. わが国では日中安静時の動脈血酸素分圧 (PaO2) が55Torr未満の症例だけでなく, PaO2が55Torr以上でも60Torr以下で睡眠時に著しい低酸素血症を伴う場合には在宅酸素療法の適応とされている. この適応基準を厳密に運用するにはPaO2 55Torr以上60Torr以下のすべての慢性呼吸器疾患患者に対して睡眠時低酸素血症の有無を検索する必要がある. しかし時間と費用がかかり, どの施設でもできるとは限らない. またPaO2が60Torrを越える例にも睡眠時低酸素血症が出現する可能性もあり, 日中のデータから睡眠時低酸素血症をおこす可能性のある患者を選別する必要がある. 本研究では, 睡眠時動脈血酸素飽和度 (SaO2) を検査すべき患者の選択基準を具体的に提案することを目的とした. 病態安定期でPaO2が55Torr以上の高齢の慢性呼吸器疾患患者34例を対象とした. 睡眠時SaO2を経時的に測定し, 全睡眠時間に対しSaO2が85%以下となる時間の割合が1%以上となる場合, あるいはSaO2が88%以下となる時間の割合が10%以上になる場合を睡眠時低酸素血症とし, 睡眠時低酸素血症と呼吸困難, 病歴, 血液ガス値, および換気機能との関係を検討した. 急性増悪の既往のある症例はすべて睡眠時低酸素血症を認めた. 睡眠時低酸素血症を認めた群は, 認めなかった群に比べ, PaO2が有意に低く, 日中の動脈血炭酸ガス分圧 (PaCO2), Base Excess が有意に高かった. また急性増悪の既往があること, あるいはPaCO2が45Torrを越えることのいずれかの条件を満たした場合を睡眠時低酸素血症を予測するための指標とすると高い感度と特異性が得られた. これらの条件を満たす場合には睡眠中にPaO2が低下している可能性が高く, 夜間睡眠時低酸素血症の有無を検索すべきと考える. |
|---|---|
| ISSN: | 0300-9173 |
| DOI: | 10.3143/geriatrics.29.953 |