1999年から2002年までの日本におけるエキノコックス症サーベイランスの評価 感染症発生動向調査から

エキノコックス症は, 1999年4月から施行された感染症法に基づく四類感染症, 感染症発生動向調査全数報告疾患に規定され, 国内患者サーベイランス (感染症サーベイランス) が実施されている. 感染症サーベイランスの結果から, 単包虫症が7例 (27~81歳, 中央値56歳), 多包虫症43例 (24~83歳, 中央値64歳) が報告されている. 多包虫症については, 年齢が上昇するにつれて報告数も増加し, 70歳以上の報告が最も多かった. 報告症例のうち何らかの症状を伴っていた症例は33例であった. 推定感染経路についても報告されたが感染経路の明らかになった症例は認められなかった. エキノコ...

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Published in感染症学雑誌 Vol. 77; no. 11; pp. 957 - 964
Main Authors 小坂, 健, 岡部, 信彦, 新井, 智, 多屋, 馨子, 谷口, 清州, 鈴木, 里和, 大山, 卓昭
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本感染症学会 20.11.2003
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ISSN0387-5911
1884-569X
DOI10.11150/kansenshogakuzasshi1970.77.957

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Summary:エキノコックス症は, 1999年4月から施行された感染症法に基づく四類感染症, 感染症発生動向調査全数報告疾患に規定され, 国内患者サーベイランス (感染症サーベイランス) が実施されている. 感染症サーベイランスの結果から, 単包虫症が7例 (27~81歳, 中央値56歳), 多包虫症43例 (24~83歳, 中央値64歳) が報告されている. 多包虫症については, 年齢が上昇するにつれて報告数も増加し, 70歳以上の報告が最も多かった. 報告症例のうち何らかの症状を伴っていた症例は33例であった. 推定感染経路についても報告されたが感染経路の明らかになった症例は認められなかった. エキノコックス症の症例を報告保健所ごとに集計したところ, 北海道の保健所が最も多く全体の94% (47/50) であった. 北海道を6地区に分類し症例を地域ごとに集計したところ, 報告数は根室・網走・釧路地区 (16例), 石狩・後志・胆振地区 (15例) が多かったが, 10万人あたりの報告数は宗谷・留萌地区 (2.05/10万人), ついで根室・網走・釧路地区 (2.00/10万人) で, 多包虫症の患者が確認されてから時間の経過した地域ほど報告数が増加する傾向が認められた. エキノコックス症の潜伏期間は数年から10年以上と考えられていることから, 現在得られている情報は数年前の感染状況を示しており, 現在の感染状況を明らかにするため現行のサーベイランスに加え, 積極的な血清疫学調査を実施する必要があると思われた.
ISSN:0387-5911
1884-569X
DOI:10.11150/kansenshogakuzasshi1970.77.957