反例事象提示における生徒の概念の変容~ジェットコースターを事例とした力学概念に関して

中学校1~3年生の生徒に対して,ジェットコースターを題材とした斜面をころがる球の運動事象を提示し,課題に従って生徒の考え方を記述させた。このとき,自分の考え方では説明できない反例事象に直面した生徒が,どのように考え方を変えるのかという,概念変容について分析を行った。その結果次の点が明らかになった。①生徒それぞれの予想内容が概念変容に影響を与えており,生徒はプリコンセプションと現実世界との比較によって概念変容を行っている。②反例の提示は,生徒によって,反例を無視したり,拒否したり,単なる例外とするなど,必ずしも概念変容を促進するとは限らない。③また,反例提示によって獲得した考え方は,領域に固有の...

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Published in日本理科教育学会研究紀要 Vol. 35; no. 2; pp. 21 - 32
Main Authors 鈴木, 克彦, 福岡, 敏行
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本理科教育学会 1994
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ISSN0389-9039
2433-0140
DOI10.11639/formersjst.35.2_21

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Summary:中学校1~3年生の生徒に対して,ジェットコースターを題材とした斜面をころがる球の運動事象を提示し,課題に従って生徒の考え方を記述させた。このとき,自分の考え方では説明できない反例事象に直面した生徒が,どのように考え方を変えるのかという,概念変容について分析を行った。その結果次の点が明らかになった。①生徒それぞれの予想内容が概念変容に影響を与えており,生徒はプリコンセプションと現実世界との比較によって概念変容を行っている。②反例の提示は,生徒によって,反例を無視したり,拒否したり,単なる例外とするなど,必ずしも概念変容を促進するとは限らない。③また,反例提示によって獲得した考え方は,領域に固有の知識であり,その知識を類似事例に適用することは困難である。上記の生徒の概念変容の要因を認知的により明らかにするためには,情意的側面,すなわち学習の必然性,自分の考え方に対する信念,納得などを重視した概念変容の研究がなされなければならない。
ISSN:0389-9039
2433-0140
DOI:10.11639/formersjst.35.2_21