ドイツ自然科学者医者協会による中等理科教育改革運動(2)―9年制中等学校における理科教育の整備状況に関する調査一
ドイツ自然科学者医者協会は、1906年にプロイセンの教育行政当局の了承を得て、9年制のすべての中等学校、すなわち、ギムナジウム319校、実科系中等学校(実科ギムナジウム、高等実科学校) 134校を対象に、「物理、化学及び生物教育の現状と望ましい整備」に関するアンケート調査を行った。その結果、次のようなことが明らかになった。例えば、物理の生徒実験が整備されている学校は、まだ1割にも満たないのに、すでにそれを実施した教師のいる学校が8割近くにも達していた。しかし、生徒実験を高等実科学校では必修とし、ギムナジウムでは選択にするという1905年のメランの提案通りに実施することは、特に時間的にかなり困難...
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Published in | 日本理科教育学会研究紀要 Vol. 33; no. 3; pp. 41 - 51 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本理科教育学会
1993
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Online Access | Get full text |
ISSN | 0389-9039 2433-0140 |
DOI | 10.11639/formersjst.33.3_41 |
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Summary: | ドイツ自然科学者医者協会は、1906年にプロイセンの教育行政当局の了承を得て、9年制のすべての中等学校、すなわち、ギムナジウム319校、実科系中等学校(実科ギムナジウム、高等実科学校) 134校を対象に、「物理、化学及び生物教育の現状と望ましい整備」に関するアンケート調査を行った。その結果、次のようなことが明らかになった。例えば、物理の生徒実験が整備されている学校は、まだ1割にも満たないのに、すでにそれを実施した教師のいる学校が8割近くにも達していた。しかし、生徒実験を高等実科学校では必修とし、ギムナジウムでは選択にするという1905年のメランの提案通りに実施することは、特に時間的にかなり困難があり、多面的な工夫を必要とした。また、自治体の援助によって実験室に高圧電流や水道が接続されたことなどが報告されているが、なお、さらに物品の購入、管理に対する予算的時間的処置、物理教室や準備室等の確保、博物館などの社会教育施設の充実、生徒の事故に対する保障など実験を伴う理科教育の発展に必要な固有の問題についてなお多くの要望が出された。同協会が、アンケート調査を通してこのようなプロイセンの中等学校における自然科学教育の整備状況や問題点を明らかにし、さらなる要望事項や検討事項を明確にしたことは、科学技術を通して近代的発展を遂げようとしていた国家や自治体、及び生徒実験などを取り入れることによって自然科学教授法の近代化を計ろうとしていた中等理科教育界にとって、具体的でより現実に即した適切な改善の方向性を提示したという点において、極めて重要な役割を果たしたものと判断される。こうした一連の改革運動及びその成果はやがて大正時代のわが国の中等学校における理化生徒実験室の設置と生徒実験の振興にも大きな影響を及ぼすことになった。 |
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ISSN: | 0389-9039 2433-0140 |
DOI: | 10.11639/formersjst.33.3_41 |