RFLP分析に基づく, 結核感染状況の疫学的検討 当院医療圏である大阪中南部地域の場合

NAフィンガープリンティング法は, 患者間の結核感染ルートを研究することを可能にした.われわれは, 当院医療圏における結核感染状況を把握するために, 2001年1月から12月の1年間に当院を受診し, 新たに結核菌培養陽性が判明した全患者のRFLP分析を行った.当院医療圏は, 日本で最も結核の流行している大阪市を含む大阪府の中南部をカバーしている.分析の対象となった410名のうち131名 (32%) がクラスターを形成した.クラスターサイズは最大13名から2名までの49組であった.患者の平均年齢は, クラスター形成患者52.1歳, 非形成患者57.2歳で, 有意にクラスター形成患者の年齢が低かっ...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in結核 Vol. 77; no. 12; pp. 783 - 788
Main Authors 谷川, 信子, 松本, 智成, 鳥羽, 宏和, 高嶋, 哲也, 露口, 泉夫, 森山, 和郎, 阿野, 裕美, 菊井, 正紀
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本結核病学会 15.12.2002
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0022-9776
1884-2410
DOI10.11400/kekkaku1923.77.783

Cover

More Information
Summary:NAフィンガープリンティング法は, 患者間の結核感染ルートを研究することを可能にした.われわれは, 当院医療圏における結核感染状況を把握するために, 2001年1月から12月の1年間に当院を受診し, 新たに結核菌培養陽性が判明した全患者のRFLP分析を行った.当院医療圏は, 日本で最も結核の流行している大阪市を含む大阪府の中南部をカバーしている.分析の対象となった410名のうち131名 (32%) がクラスターを形成した.クラスターサイズは最大13名から2名までの49組であった.患者の平均年齢は, クラスター形成患者52.1歳, 非形成患者57.2歳で, 有意にクラスター形成患者の年齢が低かった.また, クラスター形成患者の64%が60歳未満の低年齢層であった. 今回のわれわれの検討結果は, 大阪府中南部地域において, 今なお結核が流行していることを示唆していた.行政機関と連携して, RFLP分析データを積極的に活用することにより, 早期に結核感染経路を推定することも可能になるであろう.また, RFLP分析によるクラスター形成率の年次推移を追うことにより, 結核対策の指標として利用していくこともできるだろう.
ISSN:0022-9776
1884-2410
DOI:10.11400/kekkaku1923.77.783