甲状腺手術における上縦隔郭清術
甲状腺分化癌の縦隔郭清術の報告の多くは,頸部アプローチに関するもので,胸骨切開による縦隔郭清術の報告は少ない。乳頭癌の縦隔転移の頻度は0.7~27%で,好発部位は胸部反回神経リンパ節である。危険因子は気管前領域や傍食道領域,また頸部外側領域(対側頸部転移を含む)の転移である。危険因子があり,臨床的にも転移が疑われる場合には,頸部アプローチによる積極的な手術が推奨される。一方,胸骨切開による縦隔郭清術は侵襲が大きいにもかかわらず,術前画像の情報のみで手術を決定しなければならない。1cm以上のリンパ節腫脹を手術適応とした場合,8割以上の転移陽性率が報告され,1cmを超える腫瘤は手術決定の目安と考え...
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Published in | 日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 Vol. 38; no. 4; pp. 254 - 258 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
2021
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Subjects | |
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ISSN | 2186-9545 |
DOI | 10.11226/jaesjsts.38.4_254 |
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Summary: | 甲状腺分化癌の縦隔郭清術の報告の多くは,頸部アプローチに関するもので,胸骨切開による縦隔郭清術の報告は少ない。乳頭癌の縦隔転移の頻度は0.7~27%で,好発部位は胸部反回神経リンパ節である。危険因子は気管前領域や傍食道領域,また頸部外側領域(対側頸部転移を含む)の転移である。危険因子があり,臨床的にも転移が疑われる場合には,頸部アプローチによる積極的な手術が推奨される。一方,胸骨切開による縦隔郭清術は侵襲が大きいにもかかわらず,術前画像の情報のみで手術を決定しなければならない。1cm以上のリンパ節腫脹を手術適応とした場合,8割以上の転移陽性率が報告され,1cmを超える腫瘤は手術決定の目安と考えられる。自験の初期治療(胸骨切開)例の予後は,10年生存率で約8割と良好であった。手術により治癒もしくは長期生存が期待できるため,分子標的治療が可能となった現在でも,分化癌の縦隔転移は手術が第一選択である。 |
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ISSN: | 2186-9545 |
DOI: | 10.11226/jaesjsts.38.4_254 |