心房中隔欠損症を有する児の全身麻酔に伴う循環動態変化の予測因子に関する後方視的検討

心房中隔欠損症患児では健常児に比して左心室の狭小化を伴っており,全身麻酔導入後低血圧を呈しやすいことが考えられる.しかし,その術前予測因子については未だ明らかでないため,今回はそれについて後ろ向き調査を行った.対象は15歳以下の二次孔型心房中隔欠損症患児120名.身体所見,バイタルサインおよび心エコー検査所見についてカルテより収集し,麻酔導入後低血圧の有無で二群に割付して統計処理を行った.導入後低血圧群では,術前の収縮期および平均血圧が有意に高かった(順にp <0.0001,0.0022).これらは収縮期血圧の低下率ともよく相関していた(順にr = -0.5548, -0.3349).し...

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Published in岩手医学雑誌 Vol. 73; no. 2; pp. 53 - 61
Main Authors 鈴木, 健二, 脇本, 将寛
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 岩手医学会 2021
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ISSN0021-3284
2434-0855
DOI10.24750/iwateishi.73.2_53

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Summary:心房中隔欠損症患児では健常児に比して左心室の狭小化を伴っており,全身麻酔導入後低血圧を呈しやすいことが考えられる.しかし,その術前予測因子については未だ明らかでないため,今回はそれについて後ろ向き調査を行った.対象は15歳以下の二次孔型心房中隔欠損症患児120名.身体所見,バイタルサインおよび心エコー検査所見についてカルテより収集し,麻酔導入後低血圧の有無で二群に割付して統計処理を行った.導入後低血圧群では,術前の収縮期および平均血圧が有意に高かった(順にp <0.0001,0.0022).これらは収縮期血圧の低下率ともよく相関していた(順にr = -0.5548, -0.3349).しかしながら,その他の身体所見,心エコー検査所見や麻酔薬には群間差がみられなかった(p > 0.05).結論としてこの研究では,心房中隔欠損症患児は術前の血圧が高いほど麻酔導入後に低血圧を呈しやすかった.一方,心エコー検査からはそのリスクを予測することは難しかった.
ISSN:0021-3284
2434-0855
DOI:10.24750/iwateishi.73.2_53