特集「古今未曽有の日本の月/火星地下世界探査 (UZUME)計画」 月縦孔地形による放射線防護効果
本研究では月面と縦孔周辺における放射線環境について考察した.月面は大気や磁場がなく, 銀河宇宙線や太陽粒子線といった高エネルギー粒子に直接さらされる過酷な放射線環境である.月面における放射線被ばく量は実効線量当量で約420 mSv/y (太陽活動極小期)であり,こうした放射線環境 に長期間人類が滞在するためには放射線防護と被ばく量の管理が不可欠である.見積の結果,縦孔内 の被ばく量は概ね一次粒子の立体角と共に減少した.マリウス丘で観測された縦孔を仮定した場合,孔の底の被ばく量は最大で約25 mSv/yとなり,Alの防護壁に換算すると約1 mに相当する防護効果が得られることが明らかになった.縦孔...
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Published in | 日本惑星科学会誌遊星人 Vol. 29; no. 3; pp. 132 - 137 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本惑星科学会
25.09.2020
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ISSN | 0918-273X 2423-897X |
DOI | 10.14909/yuseijin.29.3_132 |
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Summary: | 本研究では月面と縦孔周辺における放射線環境について考察した.月面は大気や磁場がなく, 銀河宇宙線や太陽粒子線といった高エネルギー粒子に直接さらされる過酷な放射線環境である.月面における放射線被ばく量は実効線量当量で約420 mSv/y (太陽活動極小期)であり,こうした放射線環境 に長期間人類が滞在するためには放射線防護と被ばく量の管理が不可欠である.見積の結果,縦孔内 の被ばく量は概ね一次粒子の立体角と共に減少した.マリウス丘で観測された縦孔を仮定した場合,孔の底の被ばく量は最大で約25 mSv/yとなり,Alの防護壁に換算すると約1 mに相当する防護効果が得られることが明らかになった.縦孔環境は放射線防護の観点から有望であり,将来の長期間の有人探査において重要であるといえる.本研究は,これから行われようとしているUZUME計画に重要な科学的 知見を与えるものである. |
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ISSN: | 0918-273X 2423-897X |
DOI: | 10.14909/yuseijin.29.3_132 |