アルツハイマー病の重症度と手指機能に関する研究 簡易上肢機能検査による下位項目の検討を通して

目的: アルツハイマー病 (AD) 患者に対し, 作業療法では認知機能の改善を目的に手工芸を提供しているが, 導入にあたり手指機能の評価は重要である. しかしADの認知機能と手指機能の関連性の検証は十分ではない. そこでAD患者の手指機能を簡易上肢機能検査 (STEF) から検討し, 認知症の重症度と手指機能の関連性を明らかにする. 方法: AD群40名と非認知症群 (以下対照群) 20名を対象にSTEFを試行した. AD群は Clinical Dementia Rating (CDR) のCDR1とCDR2で各20名とした. 10項目の合計時間 (以下10項目) に加え, 粗大動作と巧緻動作...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 43; no. 5; pp. 616 - 621
Main Authors 菊池, 恵美子, 坂本, 美香, 繁田, 雅弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 25.09.2006
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.43.616

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Summary:目的: アルツハイマー病 (AD) 患者に対し, 作業療法では認知機能の改善を目的に手工芸を提供しているが, 導入にあたり手指機能の評価は重要である. しかしADの認知機能と手指機能の関連性の検証は十分ではない. そこでAD患者の手指機能を簡易上肢機能検査 (STEF) から検討し, 認知症の重症度と手指機能の関連性を明らかにする. 方法: AD群40名と非認知症群 (以下対照群) 20名を対象にSTEFを試行した. AD群は Clinical Dementia Rating (CDR) のCDR1とCDR2で各20名とした. 10項目の合計時間 (以下10項目) に加え, 粗大動作と巧緻動作の時間も測定した. 3群間の動作時間, 各群の右手と左手の動作時間, 3群間の右手と左手の動作時間の差, 認知障害と動作時間の関連性について検討を行った. 結果: 3群間で動作時間を比較すると, 右手の巧緻動作はCDR1群とCDR2群ともに対照群と比して遅かった. 右手と左手の動作時間を比較すると, 巧緻動作は対照群とCDR1群で右手が有意に短かったが, CDR2群では左右差は認めなかった. 右手と左手の動作時間の差については, 巧緻動作では対照群, CDR1群, CDR2群の順に減少した. AD群40名のCDR各項目の評価と右手と左手の動作時間の差との関連性は, 巧緻動作で「記憶」と「判断力」に有意な相関を認めた (r=0.60).「記憶」と「判断力」が低下する程, 右手と左手の動作時間の差は減少又は左手の方が短くなった. 結論: ADは軽度の段階から利き手の巧緻動作の速さが低下し, その際利き手の優位性に低下を生じる可能性が示唆された. さらに利き手の優位性低下は, 認知機能の「記憶」と「判断力」, すなわちADの中核症状と相関があることが検証された.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.43.616