段丘面上に分布するブナ林土壌の保水機能の定量評価 カヌマ沢渓畔林試験地における実証研究

ブナ林土壌の保水機能を定量的に評価した研究は非常に少ない。著者らは,岩手県南部のカヌマ沢渓畔林試験地の段丘面上のブナ林に調査地を設定して,土壌含水率と表層土層厚を20〜30地点で測定し,採取した円筒試料を用いて土壌の透水性と保水性を測定した。その結果,表層土壌含水率は深度0〜20cmの平均で27%を示し,湿潤であった。表層土層厚は調査地全体で0.5〜1.0mであった。土壌の透水性は,A層で10-4ms-1オーダー,それ以下の層で10-5ms-1オーダーであった。一方,有効孔隙率は,A層で0.30m3m-3,AB層で0.06m3m-3 と,AB層で際立って低い値を示し,細孔隙率が高かった。本調査...

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Published in東北森林科学会誌 Vol. 28; no. 1; pp. 10 - 15
Main Authors 野口, 麻穂子, 星崎, 和彦, 太田, 和秀, 大貫, 靖浩, 延廣, 竜彦, 山下, 尚之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 東北森林科学会 2023
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ISSN1342-1336
2424-1385
DOI10.18982/tjfs.28.1_10

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Summary:ブナ林土壌の保水機能を定量的に評価した研究は非常に少ない。著者らは,岩手県南部のカヌマ沢渓畔林試験地の段丘面上のブナ林に調査地を設定して,土壌含水率と表層土層厚を20〜30地点で測定し,採取した円筒試料を用いて土壌の透水性と保水性を測定した。その結果,表層土壌含水率は深度0〜20cmの平均で27%を示し,湿潤であった。表層土層厚は調査地全体で0.5〜1.0mであった。土壌の透水性は,A層で10-4ms-1オーダー,それ以下の層で10-5ms-1オーダーであった。一方,有効孔隙率は,A層で0.30m3m-3,AB層で0.06m3m-3 と,AB層で際立って低い値を示し,細孔隙率が高かった。本調査地のブナ林土壌の渇水緩和機能については,降水後に孔隙に水を保持する能力が高いのに対し,洪水調節機能である水を貯えられる容量に関しては,平均表層土層厚が薄く細孔隙率および液相率が高いため,多くないと判断された。
ISSN:1342-1336
2424-1385
DOI:10.18982/tjfs.28.1_10