鈍的重症肝損傷の治療戦略 手術的治療および非手術的治療の適応と限界

重症肝損傷に対する治療戦略を自験例から検討した。対象は過去16年間に経験した鈍的IIIb型重症肝損傷(またはAAST grade IV/V)とした。初期輸液療法により循環が改善し非手術的治療を開始した34例では,3例が急性期に開腹手術を要し,いずれも開腹所見で肝静脈損傷を認めた。重症肝損傷患者における肝静脈損傷は,急性期における循環動態悪化の決定的因子であり,循環動態に関わらず手術適応とすべきである。非手術的治療の補助療法として,TAEが動脈性血管外漏出像12例と仮性動脈瘤1例に超選択的に行われ,再出血は認めなかった。限定された適応での確実なTAEは安全かつ有効な治療法となるが,超選択的でない...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 28; no. 6; pp. 797 - 801
Main Authors 山崎, 元靖, 清水, 正幸, 吉井, 宏, 北野, 光秀, 関根, 和彦, 相川, 直樹, 船曵, 知弘, 松本, 松圭
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 30.09.2008
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.28.797

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Summary:重症肝損傷に対する治療戦略を自験例から検討した。対象は過去16年間に経験した鈍的IIIb型重症肝損傷(またはAAST grade IV/V)とした。初期輸液療法により循環が改善し非手術的治療を開始した34例では,3例が急性期に開腹手術を要し,いずれも開腹所見で肝静脈損傷を認めた。重症肝損傷患者における肝静脈損傷は,急性期における循環動態悪化の決定的因子であり,循環動態に関わらず手術適応とすべきである。非手術的治療の補助療法として,TAEが動脈性血管外漏出像12例と仮性動脈瘤1例に超選択的に行われ,再出血は認めなかった。限定された適応での確実なTAEは安全かつ有効な治療法となるが,超選択的でない塞栓術の乱用は避けるべきである。手術的治療の全24例の救命率は,Damage control surgery(以下,DCS)7例で14.3%(1/7),肝切除術17例では94.1%(16/17)だった。ロジスティック解析から,骨盤輪骨折とAIS4以上の胸部外傷が死亡転帰の独立因子であった。腹腔外損傷を合併しない重症肝損傷に対しては,肝切除術の治療成績は良好であり,安易なDCSはむしろ術後の出血・感染性合併症を増加させる可能性がある。胸部や骨盤の重症外傷を合併する最重症例の治療戦略は今後の課題である。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.28.797