アルツハイマー型痴呆の single photon emission CTによる診断精度に関する検討

アルツハイマー型痴呆におけるSPECTの診断マーカーとしての意義を明らかにする目的で, 本検査の診断精度を検討した. アルツハイマー型痴呆と診断された46例および健常老年者23例を対象とし, 臨床歴を知らない複数の医師によって側頭頭頂葉連合野の血流低下の有無を定性的に評価した. アルツハイマー型痴呆46例中38例 (83%) に一側または両側の側頭頭頂葉領域の血流低下が検出され, これは痴呆軽度群67%, 中等度群86%, 高度群92%と痴呆の程度が進むにしたがい高率となった. しかし, 同様の変化は健常老年者の23例中2例にみられたにすぎなかった. したがって, 診断感度 (側頭頭頂葉の血流...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 29; no. 6; pp. 463 - 468
Main Authors 阿部, 晋衛, 浅野, 哲一, 高崎, 優, 新井, 久之, 岩本, 俊彦, 鈴木, 孝成, 羽生, 春夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 01.06.1992
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.29.463

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Summary:アルツハイマー型痴呆におけるSPECTの診断マーカーとしての意義を明らかにする目的で, 本検査の診断精度を検討した. アルツハイマー型痴呆と診断された46例および健常老年者23例を対象とし, 臨床歴を知らない複数の医師によって側頭頭頂葉連合野の血流低下の有無を定性的に評価した. アルツハイマー型痴呆46例中38例 (83%) に一側または両側の側頭頭頂葉領域の血流低下が検出され, これは痴呆軽度群67%, 中等度群86%, 高度群92%と痴呆の程度が進むにしたがい高率となった. しかし, 同様の変化は健常老年者の23例中2例にみられたにすぎなかった. したがって, 診断感度 (側頭頭頂葉の血流低下あり/患者) は83%, 特異性 (側頭頭頂葉の血流低下/健常者) は91%と考えられた. SPECTで観察されるこのような局所的な脳血流分布の異常は, アルツハイマー型痴呆の軽症例または病初期より認められ比較的特有な変化であることから, 診断マーカーとしての意義はきわめて高いと推測された. 今後, 本検査などによって観察される側頭頭頂葉の異常を, アルツハイマー型痴呆の臨床診断基準の一つとして活用すべきと考える.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.29.463