老年者慢性腎不全における代謝性アシドーシスの特徴について
老年者慢性腎不全における代謝性アシドーシスの性状を明らかにするために, 動脈血ガス分析値および血清電解質濃度とクレアチニンクリアランス (以下Ccr) との関係について検討を行った. 東京都老人医療センター内分泌代謝科入院症例から, 年齢75歳以上で日常生活動作良好な37症例 (男性19例, 女性18例, 年齢80±4歳, Ccr45.4±24.3ml/min/1.73m2, mean±SD) を選択し対象とした. 電解質酸塩基平衡に影響を及ぼし得る疾病例および薬剤投与例等は対象から除外した. なお, 動脈血ガス分析値および血清電解質濃度の基準域は, 当センター入院症例を対象として Hoffm...
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 28; no. 4; pp. 536 - 545 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
01.07.1991
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Subjects | |
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ISSN | 0300-9173 |
DOI | 10.3143/geriatrics.28.536 |
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Summary: | 老年者慢性腎不全における代謝性アシドーシスの性状を明らかにするために, 動脈血ガス分析値および血清電解質濃度とクレアチニンクリアランス (以下Ccr) との関係について検討を行った. 東京都老人医療センター内分泌代謝科入院症例から, 年齢75歳以上で日常生活動作良好な37症例 (男性19例, 女性18例, 年齢80±4歳, Ccr45.4±24.3ml/min/1.73m2, mean±SD) を選択し対象とした. 電解質酸塩基平衡に影響を及ぼし得る疾病例および薬剤投与例等は対象から除外した. なお, 動脈血ガス分析値および血清電解質濃度の基準域は, 当センター入院症例を対象として Hoffmann 法により設定した. 結果は以下の4点にまとめられた. (1)Ccr20ml/min/1.73m2以下の症例において, 代謝性アシドーシスを高頻度に認めた. (2)Ccrの低下に伴って, 血漿重炭酸濃度は低下し血清クロール濃度は上昇した. (3)Ccr低下に伴うアニオンギャップ値の上昇は認められなかった. (4)血漿重炭酸濃度と血清カリウム濃度との間に, 有意の負の相関を認めた. 以上より, 高カリウム血症を伴う高クロール性正アニオンギャップアシドーシスが老年者慢性腎不全における代謝性アシドーシスの特徴であった. また, アニオンギャップ値の変動を認めなかった一因として, アニオンギャップ値増加の主要な要因とされる高燐血症の発現が軽度にとどまったことが挙げられた. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.28.536 |