麻痺肢の自他帰属感と片麻痺憎悪 ―単一事例研究による検討

【背景】片麻痺憎悪における麻痺肢への憎悪感情や自傷行為の生起条件ならびに経時的変化については十分に検討されていない。【方法】右半球損傷1例に対し,発症4日目から30日間,1日4回の頻度で①麻痺肢の非所属感②麻痺肢の他人帰属感③麻痺肢に対する憎悪感情・自傷行為に関する質問評価を行った。【結果】本例は麻痺肢を自己と認識した際に憎悪感情を抱き,自傷を行ったと回答した。一方で,麻痺肢を内縁の妻と認識した際には自傷をしなかったと回答した。憎悪感情や自傷行為と,非所属感や他人帰属感といった身体パラフレニア症状の経過は一致しなかった。【考察】本研究の新規性は,片麻痺憎悪の症状を自己報告による行動データを用い...

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Published in高次脳機能研究 (旧 失語症研究) Vol. 45; no. 3; pp. 151 - 158
Main Authors 橋本 幸成, 岡﨑 孝広, 立場 文音
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本高次脳機能学会 30.09.2025
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ISSN1348-4818
1880-6554
DOI10.2496/hbfr.45.151

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Summary:【背景】片麻痺憎悪における麻痺肢への憎悪感情や自傷行為の生起条件ならびに経時的変化については十分に検討されていない。【方法】右半球損傷1例に対し,発症4日目から30日間,1日4回の頻度で①麻痺肢の非所属感②麻痺肢の他人帰属感③麻痺肢に対する憎悪感情・自傷行為に関する質問評価を行った。【結果】本例は麻痺肢を自己と認識した際に憎悪感情を抱き,自傷を行ったと回答した。一方で,麻痺肢を内縁の妻と認識した際には自傷をしなかったと回答した。憎悪感情や自傷行為と,非所属感や他人帰属感といった身体パラフレニア症状の経過は一致しなかった。【考察】本研究の新規性は,片麻痺憎悪の症状を自己報告による行動データを用いて経時的に検討した点にある。本例の憎悪感情は,麻痺肢を自己と認識した際に生じ,誤認対象だった内縁の妻との関係性が自傷行為を抑制したと解釈できた。憎悪感情や自傷行為は,麻痺肢の自他帰属感および誤認対象が影響する可能性がある。
ISSN:1348-4818
1880-6554
DOI:10.2496/hbfr.45.151