地方環境研究所における研究成果の政策活用メカニズム—PM2.5関連研究を例としたケーススタディ

地方環境研究所(以下,「地環研」)は,都道府県や指定都市(以下,「都道府県等」)の環境行政を推進するための調査・研究を担う機関であり,その研究成果は各自治体の環境政策・施策への活用が想定される。地環研の研究成果の活用実態を明らかにすることを目的とした先行研究(以下,「既報」)のアンケート調査では,活用が十分に進んでいない状況やその主要因が示されたが,活用に至るメカニズム等の詳細は十分に解明されていない。そこで,既報で対象とされたPM2.5関連研究を担当する行政部署及び地環研の職員15名に対してインタビュー調査を実施することで,研究成果の活用メカニズムを明らかにすることを試みた。調査結果の総合的...

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Published in環境科学会誌 Vol. 37; no. 6; pp. 200 - 210
Main Author 豊永, 悟史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 環境科学会 30.11.2024
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ISSN0915-0048
1884-5029
DOI10.11353/sesj.37.200

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Summary:地方環境研究所(以下,「地環研」)は,都道府県や指定都市(以下,「都道府県等」)の環境行政を推進するための調査・研究を担う機関であり,その研究成果は各自治体の環境政策・施策への活用が想定される。地環研の研究成果の活用実態を明らかにすることを目的とした先行研究(以下,「既報」)のアンケート調査では,活用が十分に進んでいない状況やその主要因が示されたが,活用に至るメカニズム等の詳細は十分に解明されていない。そこで,既報で対象とされたPM2.5関連研究を担当する行政部署及び地環研の職員15名に対してインタビュー調査を実施することで,研究成果の活用メカニズムを明らかにすることを試みた。調査結果の総合的な分析の結果,活用に至った研究にはシーズ先行型研究とニーズ先行型研究の2種類が存在し,政策過程と研究過程の関係性が異なっていることが示された。シーズ先行型研究では,両過程は基本的に分離しており,研究成果を得た後で活用が検討され,活用の有無がタイミング等に依存する「機会的活用」が確認された。ニーズ先行型研究では,研究開始前の段階で両過程の接触があり,研究の開始時点で活用が計画されている「計画的活用」が確認された。また,活用頻度を増加させる観点でニーズ先行型研究の推進が重要であるが,従来地環研ではシーズ先行型研究が主として実施されてきたと推測され,活用が進まない要因の一つと考えられた。ニーズ先行型研究を推進するためには,政策及び研究の目的等に応じた両過程の境界の適切な設定が重要であり,継続的にニーズ先行型研究を実施するための仕組みや知識ブローカー等の人材を駆使していくことが必要と考えられる。
ISSN:0915-0048
1884-5029
DOI:10.11353/sesj.37.200