ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種後症状についての大規模疫学調査(名古屋スタディ)と健康者接種バイアス

目的 ランダム割付を行わない解析によるワクチン効果の評価の歪みの原因として認識されている健康者接種バイアスの存在について,ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種後症状についての大規模疫学調査である名古屋スタディの接種後症状の実データを用いて検討することを目的とした。方法 HPVワクチンの重点接種期間が2年あった1997年度,1998年度,1999年度生まれの3学年について,14歳時に初回接種を受けた者は3,246人,非接種者は3,961人であった。この合計7,207人のワクチン接種をしていない13歳時の症状発生割合を生まれ年度ごとに比較して,健康者接種バイアスの存在を検討する。結果 発...

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Published in日本公衆衛生雑誌 Vol. 71; no. 11; pp. 667 - 672
Main Author 鈴木, 貞夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 2024
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ISSN0546-1766
2187-8986
DOI10.11236/jph.24-053

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Summary:目的 ランダム割付を行わない解析によるワクチン効果の評価の歪みの原因として認識されている健康者接種バイアスの存在について,ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種後症状についての大規模疫学調査である名古屋スタディの接種後症状の実データを用いて検討することを目的とした。方法 HPVワクチンの重点接種期間が2年あった1997年度,1998年度,1999年度生まれの3学年について,14歳時に初回接種を受けた者は3,246人,非接種者は3,961人であった。この合計7,207人のワクチン接種をしていない13歳時の症状発生割合を生まれ年度ごとに比較して,健康者接種バイアスの存在を検討する。結果 発生割合が非接種者で有意に高かったのは,1997年度生まれ,2010年発生の「ひどく頭が痛い」,1998年度生まれ,2011年発生の「過呼吸」,1999年度生まれ,2012年発生の「身体がだるい」と「視力が急に低下した」の4項目のみであり,健康者接種バイアスはほとんど観察されなかった。結論 健康者接種バイアスによるHPVワクチン接種のオッズ比の過小評価は,あっても非常に限定的で,名古屋スタディでは,本来高いはずのオッズ比が健康者接種バイアスにマスクされているという主張は当たらない。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.24-053